スタッフに“人材紹介料”って支払ってもいいの?

昨今、医療業界においても人材不足は深刻な問題となっており、現在働いているスタッフに知り合いを紹介してもらう「職員紹介制度」を導入しておられるクリニックも珍しくないようです。

今回は『スタッフに人材紹介料って支払ってもいいの?』と題しまして、紹介してくれたスタッフに対して、紹介料を支払うことは法律に違反してしまう可能性があるのか?等、職員紹介制度を導入する際の注意点やポイントについて詳しく解説致します。

職員紹介制度って?

看護師や受付スタッフが家庭の事情などを理由に退職してしまうことになり、早急に欠員補充しなくてはならないものの、ハローワークへ求人票を出してもなかなか応募が来ず、人材確保に頭を抱えている…というクリニック院長からのご相談も少なくありません。

人材確保の手段の一つとして「職員紹介制度」とういうものがありますが、その運用については紹介したスタッフと紹介により入職したスタッフそれぞれに1万円程のお金を支払うといった方法をとっているケースが一般的です。
実際にこの「職員紹介制度」でうまく人材確保を行っている医療機関に話を聞くと、紹介者と入職者にそれぞれ10万円ずつ支給しているというインパクトのある金額を提示しているところも存在するようです。
10万円というと大きな金額に聞こえますが、実際には有料の求人雑誌にお金を払うことに比べれば安価で済み、さらにはスタッフからの紹介の方が、イメージに近い人材を採用できる可能性が高いといったメリットもあるようです。

職員紹介制度で気を付けるべき「職業安定法違反」って!?

しかし、この職員紹介制度には、「職業安定法違反」となってしまう可能性もあるので注意が必要です。
職業安定法第四十条において、「労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。」と定められています。
つまり、スタッフへの紹介料の支払いは報酬とも解釈できてしまうため、職業安定法違反となる可能性もあるということです。
しかし、この法律の条文には例外が定められており、「賃金、給与その他これらに準ずるものを支払う場合」と行政からの「認可を受けて行う場合」は除かれます。

一方で「賃金、給与その他これらに準ずるものを支払う場合」に紹介料の支払いが該当すると解釈することもできます。
ただ、そもそも賃金とは労働の対価として支払われるものなので、スタッフが候補者を紹介する行為を労働として捉えていいのかという判断が難しいいうのが実際のところです。
例えば、賃金規定に紹介手当といった手当名を設けて、支給ルールもそのように記載しておく方法も一つの策でしょう。
もっともこのような場合でも、行政機関によって見解が分かれているので、明確に合法と位置付けられる根拠がないのが実情です。

法律違反にならないための運用方法はあるの?

職業安定法違反では、第65条により「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金刑」が科せられることがあります。
違法性を指摘されないためには、紹介料以外の方法を考えて運用するのが無難と考えられます。
紹介料以外の運用例としては、賞与の支給時にクリニックへの貢献度が高いことを理由に、一定の加算を行うなどの方法があります。
「紹介で現金10万円プレゼント!」というにニュアンスに比べればインパクトには欠けてしまいますが、「知人の紹介などで当院への貢献度が高い場合には賞与で加算を行います」と賃金規定に明確に記載することができます。
また、福利厚生の一環としてスタッフが知人を誘う際の会食代をクリニックが負担(補助)するという方法も一つです。
その際には、不正の予防策として上限金額や人数を決めておいたり、請求書と報告書の提出を義務付けるなどの運用規定を決めておくと安心です。

それ以外には、採用されたスタッフには「入職お祝い金」を支給するという方法をとっているクリニックも多いようです。
「入職お祝い金」は、単なるお祝い金のため、法に触れるものではありません。
しかし、「入職お祝い金」については、すぐに退職されてしまっても困るので、入職時に半額を支給、残りは試用期間満了後の本採用時に支給するという工夫を行ってみてはいかがでしょうか。

職員紹介制度のポイントまとめ

1.職業安定法違反に注意する
紹介料の支給は、労働の対価としてスタッフに支払う賃金、給与その他に該当しないとみなされ、法律違反となる可能性もあるので注意しましょう。

2.スタッフ紹介の貢献度を賞与に反映する
違法性を指摘されないためには、紹介料を支払うのではなく、スタッフ紹介の貢献度を賞与に反映させるのも一つの手段です。

3.知人を勧誘する際の飲食代を補助するのも◎
知人を職場へ誘う際の食事代などを福利厚生の一環として補助する方法も有効です。
その際には、報告書の提出を義務付けるなどの不正対策をとっておくと安心して運用できます。

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いかがでしたでしょうか。
冒頭でも述べた通り、昨今の人材不足によりクリニックにおいても採用がなかなかうまくいかず、職員紹介制度を検討されるケースも増えているようです。
しかし、これらの制度を導入する際には、後々トラブルに発展してしまわぬよう、法律についても十分に理解したうえで、クリニックにとって最適な運用を検討することが重要です。

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