◆親子間承継トラブル事例◆ クリニックの土地が値上がりして相続税が払えない!?

今回は、「◆親子間承継トラブル事例◆クリニックの土地が値上がりして相続税が払えない!?」と題しまして、一つのストーリーを例に挙げ、親子間継承でよくある相続税に関するトラブルについて解説致します。

■S内科の事例

<登場人物>
父(ショウイチ):S内科院長。75歳になるタイミングで引退し、長男にクリニックを継承しようと考えている。

長男(セイジ):現在は大学病院に勤務している。来年、実家のクリニックを引き継ぐ予定。

<あらすじ>
20××年夏。お盆休みで久しぶりに実家に帰ってきた長男。
父のショウイチは来年からクリニックを引き継ぐ息子のために財産のとりまとめを行っていたようなのですが…

父「お前への引き続きに向けてうちがもっている財産を取りまとめてびっくりしたんだ」
長男「どうしたの?」
父「うちの主たる財産と言えば、クリニックの土地と建物、あとはクリニックと繋がっている住宅くらいなんだが、ここ数年で行われた駅前の再開発の影響で、土地がかなり値上がりしていたんだよ」
長男「確かにうちは駅前の立地の良さのおかげで患者さんが沢山来ているよね」
父「そうなんだよ。おかげでこれまで順調にやってこれたわけだが、相続となるとこれが裏目に出てしまうようなんだ…」
長男「?」
父「お前にも相談したように、来年ここを引き継ぐために新しく医療機器を入れたり、内装を綺麗にしたり、自宅部分を二世帯住宅にリフォームしたりと、ここ最近結構なお金を使ってしまったのは知っているだろ。そういうことで今うちには現預金があまりない状況なんだが、土地の値段が上がってしまったことで、相続税が払えるかどうかを心配しているんだよ…」
長男「つまり、払えなければ、最悪の場合クリニックや家を売らないといけないかもしれないってこと?」

せっかく父親から息子へ、承継の準備をはじめていた矢先、相続税という思わぬ壁に突き当たってしまったS内科…いったいどうなるのでしょうか?

■小規模住宅等の評価額の特例について

S内科の事例のように、同じ敷地内にクリニックと自宅を併設しているというケースはよくあることでしょう。
しかし、相続発生時の土地の相続税評価額が高かった場合、多額の相続税が発生してしまう場合があるので注意が必要です。
もし後継者(今回の場合は息子)が、この納税資金を用意できない場合、クリニックや自宅を手放さなくてはならないということになりかねません。
そうなってしまうと、これまで父親が築き上げたクリニックの経営基盤と生活を一気に失ってしまうことになってしまいます。

このような事態を防ぐため、相続税法では一定面積までの事業用(クリニック)の宅地や居住用の住宅地(小規模宅地等)については、一定の要件を満たせば評価額の80%を減額する(不動産貸付用の場合は50%)という特例を設けています。
>相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

■小規模住宅等の評価額の特例について

小規模宅地等の特例として、国税庁ホームページでは「小規模宅地等については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、次の表に掲げる区分ごとに一定の割合を減額します。」と定められています。

また、「特例の適用を選択する宅地等が以下のいずれに該当するかに応じて、限度面積を判定します。」ともあります。

参照:『No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)』(国税庁公式ホームページ・https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm)
事例のように構造上は完全独立型の二世帯住宅の場合であっても、区分所有建物登記されている建物を除いて、一定の要件を満たせば、同居とみなされます。
こちらも同様に小規模宅地等の特例の適用の対象となります。

上記のように小規模宅地等の特例は、適用要件をしっかりと把握しておくことで相続財産を大幅に減らすことができ、相続税額に大きな影響を与えます。
なお、この特例の適用には相続税の申告書に、戸籍の謄本や遺産分割協議書の写しなど一定の書類の添付が必要となりますので、そちらも合わせて準備しておきましょう。

■クリニックの開業(新規・承継)や運営についてのご相談を承っております

いかがでしたでしょうか。
今回の事例のような相続のトラブルだけに限らず、いざ親のクリニックを承継しようとした矢先に、思わぬ問題が生じてしまうといったことは決して珍しいことではありません。

弊社では、グループ内に税理士法人や社労士法人を有するクリニック経営に特化したコンサルティングファームとも協力し、クリニックの開業や運営に関するサポートを行っております。

クリニックの開業や運営について、ご質問やご相談などがございましたら、まずはお気軽にお問い合わせください。