引き際を見誤らない為の開業医の心得

<院長プロフィール>
ご年齢:79歳
開業年数:25年以上
エリア:関西
診療科目:一般内科・消化器内科

事例の先生は、医療法人の理事長・院長で、二人の子息は、医師である長男と会社員の次男です。
長男が父親と同じ診療科に進んだことから、ゆくゆくは、自分の後を継いでくれるという期待の下でのライフプランを描いていました。

帰省の都度に長男にはクリニックを継いでくれるのかを訊いていましたが、
「跡を継ぐことは考えていない訳ではないけど…、仕事や家庭のことに追われて、なかなかじっくり考える時間がない」とはぐらかされていました。

先生は無理強いすることなく、長男の決心を待とうと気長に考えていましたが、
気が付けば先生は80歳が目前で体力的に厳しくなり、病院でキャリアを積んできた長男もすでに48歳に。

そして、ある時ついに、
「今の病院を退職して、開業することにした。でも、申し訳ないけど、父さんのクリニックは患者がだいぶ減っているので、将来の生活設計を考えると数の見込める都市部で開業したい」と言われてしまいました。

患者数が減ってしまってからの後継者探しは難しく…

まだ十分な集患のあった10年前には、知り合いの開業医からクリニックを売ってくれないか? といった話もありましたが、1日20人に満たない現在の患者数では新たな買い手を探すことは困難です。
結局、長男からは拒まれ、第三者継承による譲渡対価も得られないどころか、医療機器の処分や職員の退職金などで数百万円の廃業費用がかかってしまいました。

さらに悩ましいことに、長男が後を継いでくれることを前提に、すでに先生個人所有のクリニックの土地・建物を長男に財産分与していました。もちろん、次男の了承も得た上でのことです。
長男への継承後も非常勤医として診療を手伝い、次男にはある程度まとまった預貯金を残そうと考えていた先生でしたが、クリニックの継承者がいなくなったことで状況は一変しました。

先生夫妻の老後の生活費には不自由しないでしょうが、長男に渡した不動産評価に見合うまとまった資金の捻出は難しく、
将来兄弟でもめる事態にならないか、思わぬ不安の種を抱えてしまうことになりました。

結論を先送りにした結果、引き際を見誤る

この事例はいろいろな反省点がありますが、
一番大きい問題は、引き際を決めず、結論を先送りにし、場渡り的に長い時間を過ごしてしまったことです。

もしも、盛業中だった5~10年前に第三者事業継承の可能性をシミュレーションし、タイムリミットはいつなのか判断できていれば、長男への継承はあきらめ、第三者へクリニックを譲渡する、といった選択ができた可能性もあります。

M&Aの世界には、「売りたくない時が一番の売り時」という言葉があります。
自分のクリニックにはどのくらい資産価値があるのか? もしも第三者に継承するなら、いつがタイムリミットになるのか?
いざというときに選択肢がなくなってしまわないよう、引き際を把握しておくことをお勧めいたします。

クリニック継承や相続税対策などは専門家へ

今回ご紹介した事例に見るように、多忙を極めるクリニックの院長が第三者への継承や、税務周りの対策を正しく判断していくことには限界があります。

メディカルトリビューンでは、新規開業やクリニック継承、税務・会計面で500件以上の支援実績を持つ日本医業総研様と提携し、
これまで地域医療に貢献してこられた開業医の先生方の、豊かなリタイアメントライフを実現するためのサポートをさせていただいております。

ご勇退をお考えでしたり、後継者に関するお悩みがございましたら、先生一人で悩まず、相談をご活用ください。
もちろん、将来に備え事前に情報収集しておきたいといった観点でも構いません。ご相談や譲渡額の査定はすべて無料ですので一度お気軽にご相談ください。