開業医は押さえておきたい年金の仕組み

医師もいつか引退をする日がきます。

そして、引退をすると一般職業の方と同様に公的年金が受け取れますが、年金のみでの生活が難しいのは同じです。
特に個人事業主である開業医は、現役時代の収入は大きいですが、引退後の年金は極めて少なくなります。

今回は、医師を取り巻く公的年金制度と、それを補う私的年金についてご説明いたします。

■知っておきたい年金の仕組み

個人事業主である開業医は、勤務医よりも収入は多い傾向にあります。
※勤務医平均年収;1,479万円、開業医平均年収;2,530万円(厚生労働省発表「勤務医の給料と開業医の収入差額について」より)

しかしながら、引退後の公的年金はかなり心もとない額となる為、現役のうちに私的年金や運用商品等で資金計画をつくり、老後の備えを用意しておく必要があります。

一方、勤務医の場合、給料という形で報酬をもらっているため、厚生年金に加入をしていることや、病院によっては企業年金を取り入れているところもあるので、老後の公的年金に限れば、開業医よりもかなり恵まれていることが多いと言えます。

■医師が加入する/加入できる公的年金

医師が加入する、または加入できる公的年金は以下の3つがあります。

  1. 国民年金
  2. 厚生年金
  3. 全国国民年金基金 日本医師・従業員支部

前述のとおり、基本的には、個人事業主である開業医は国民年金に加入、報酬を給料で受け取っている勤務医は厚生年金に加入をしています。

③の全国国民年金基金は公的年金は公的年金ではありますが、国民年金に上乗せをする「私的年金」という側面もあります。

①国民年金

日本に住み20歳~60歳未満の人が全員加入することになっている年金です。
国民年金を払うことで、65歳以降は老齢基礎年金を受け取ることができます。

【老齢基礎年金の計算式(令和3年度版)】
780,900円×納付月数/480カ月

【例】
20年間納めた場合、
780,900円×240カ月/480カ月=390,450円
となります。

最大でも年間80万円弱となるため、これだけで生活するのは難しい額と言えるでしょう。

②厚生年金

いわゆるサラリーマンなど、会社勤めで給料をもらっている場合、厚生年金に加入をします。

国民年金のように自ら納付ではなく、厚生年金保険料という項目で給料から天引きされ納める形となります。
天引きされる厚生年金保険料は、収入によって異なり、国民年金のように一律ではありません。

厚生年金を納めることで、国民年金の支払いも完了するため、将来受け取れる金額は、老齢基礎年金に、老齢厚生年金が上乗せされて65歳以降支払われます。

そのため、個人事業主よりサラリーマンの年金制度の方が額面が多くなります。

また、老齢厚生年金は、現役時代に厚生年金保険料を多く払うほど多く受け取れるため、年収が高い人ほど、老齢厚生年金が大きくなるという特徴があります。

③全国国民年金基金 日本医師・従業員支部

個人診療所の医師や従業員、家族や非常勤の医療従事者が加入対象となる制度です。

加入義務はなく、自助努力で加入の有無を決める制度となっており、掛金は全額所得控除となり、節税効果があります。

まずは終身年金A型(15年間保証付き)、B型(保証期間なし)どちらかのプランに加入し、その後、自身の希望に合わせて口数を増やしていきます。

最大で月6万8,000円まで加入することができ、加入した口数によって受取額が増減します。

なお、iDeCo(イデコ)との併用は可能ですが、iDeCo(イデコ)と併せ68,000円が上限額となります。

全国国民年金基金が、コースごとに受け取り額が固定の「確定給付」なのに対し、iDeCo(イデコ)は投資額が毎月一定ですが、運用成果によって受取額が変わってくるという違いがあります。

iDeCo(イデコ)のような運用リスクは避けたいが、節税効果は享受したい。という方に全国国民年金基金は向いています。

■ご勇退前に早めの準備・情報収集をおすすめします

いかがでしたでしょうか。公的年金だけでは、引退後の収入源がかなり心元ない額となります。

事前にしっかりと準備することが必要です。

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