医療法人のクリニックを継承するには?

厚生労働省のデータによれば、病院長の平均年齢は63.9歳、診療所の院長の平均年齢は60.7歳と、医療界全体が医師高齢化に伴う事業承継時期にさしかかっているといえます。

また、医療法人は地域医療を支えている社会的公器という側面もあり、閉院を選択した場合、雇用や患者の受け皿が失われ、地域医療の崩壊につながるケースもありえるため、医療法人における後継者問題は、理事長個人・医療法人のみにとどまらず、地域という観点からも重要な経営課題であるといえるでしょう。

医療法人には、平成19年3月31日以前に開設された持分を有する医療法人(経過措置型医療法人とも)と、平成19年4月1日以降に開設された持分を持たない「基金拠出型医療法人」の2つが存在します。

今回は、医療法人全体の8割近くを占める、「持ち分あり医療法人」が継承する場合の注意点についてみていきましょう。

■持分あり医療法人を後継者に引き継ぐポイント

  1. 経過措置型医療法人の事業承継は、理事長ポストの交代と出資持分の承継により完了する。

  2. 出資持分には財産価値があるため、相続発生時には相続税問題が生じる。

  3. 当該相続税問題が医療法人の事業承継を困難にしているため、出資持分を円滑に承継できるかどうかが重要になる。

■持分あり医療法人の継承には「経営権」「財産権」の譲渡が必要

医療承継は、理事長ポストである「経営権」と、「財産権」である出資持分の2つの継承によって完結することになります。

1 .経営権の継承

医療法人の理事長は原則、医師又は歯科医師でなければならないという決まりがあるため、一般企業の継承に比べ後継者候補の選択肢が限られるという特殊性があります。

その為、個人で探すよりも、多くの医師会員を抱えるクリニック継承専門の会社を使うなど、広く募集して後継者を見つける可能性を高めていく必要があります。

2.財産権(持ち分)の継承

医療法人の出資持分は、相続税の対象となります。

医療法人の場合、配当が禁止されているため、これまで積み上げてこられた剰余金が膨らみ、出資持分の価値が高額になる傾向があります。

その結果、医療法人の出資持分を承継した相続人が支払う相続税も多額になる為、医療法人の理事長の世代交代を困難にしています。

仮に何の対策もとらず、相続が発生した場合、相続人個人では多額の相続税負担ができないため、出資持分の払戻により納税資金を確保することも想定されます。

結果、個人の税金の問題を超えて、医療法人の経営を揺るがす事態になりかねません。

実際に出資持分の払戻請求により、多額の資金が 医療法人から流出し、経営が立ち行かなくなったケースも散見され、医療法人の継承にあたり、相続税問題は避けては通れない課題と言えるでしょう。

また、病院の場合は30年に1度の建て替え等、数十億の出費に備えた内部留保はきわめて大事ですが、クリニックにおいては医療機器の入れ替えがあるとしても、そこまでのまとまった資金を必要としません。

そして、買い手となる先生側から見ても、医療法人は利益の再配分が原則できないことから、自由にならない資産を借金をしてまで購入することの意味は薄いと言えます。

■医療法人の後継者探しは専門家へ相談を

このように持分ありの医療法人の継承は難易度が高く、ご自身で候補者を探すも、うまくいかないといったケースは少なくありません。

弊社でご支援させていただく場合、この相続の問題を解消する為、「退職金スキーム」での継承をご提案させていただいております。

専門的な内容になる為、詳しくは毎月している開業医向けの「第三者継承セミナー」「閉院準備セミナー」にて、解説させていただいております。併せてご活用ください。