個人立のクリニックを継承するには?

■個人立のクリニックを引き継いでもらう際のポイント

  1. 法律上では「新規開設」扱いになる

  2. 患者の引継ぎを行い、遡及申請を行う

■個人立のクリニックの継承は法律上は「廃止・新規開設」となる

まず、意外に思われる先生もいらっしゃると思いますが、実は個人事業として運営されているクリニックの継承は、 法律上は「新規開業」と同じ扱いになります。

つまり、クリニックを一旦閉院し、そのうえで後継者となる先生が翌日に同じクリニックを新規開業する、という手順を踏むことになります。

そのため、「診療所開設届」「保険医療機関指定申請書」の手続きが必要となります。

注意すべきは「保険医療機関指定申請」で、この申請が受理されるには通常は1カ月程度を要します。

つまり、せっかく引き継いだのにも関わらず、そのままでは1カ月間はそのクリニックで保険診療ができないという困った事態になってしまいます。

■遡及申請を行って切れ目なく診療が行えるようにする

このような事態を避けるために、国は「遡及」という制度を用意しています。
これは、例外的に保険医療機関の指定日を遡って認めるという制度になります。

この遡及手続きを行うことで、後継の先生が切れ目なく診療を行えるようになるわけですが、遡及が認められるには条件があります。

【遡及が認められる条件】

①保険医療機関等の開設者が変更になった場合で、前の開設者の変更と同時に引き続いて開設され、患者が引き続き診療を受けている場合。

②保険医療機関等の開設者が「個人」から「法人組織」に、または「法人組織」から「個人」に変更になった場合で、患者が引き続き診療を受けている場合。

③保険医療機関が「病院」から「診療所」に、または「診療所」から「病院」に組織変更になった場合で、患者が引き続き診療を受けている場合。

④保険医療機関等が至近の距離に移転し同日付で新旧医療機関等を開設、廃止した場合で、患者が引き続き診療を受けている場合。

例えば、個人立のクリニックを勤務医をされている先生が引き継ぐ場合は、①に該当しますが、何れの場合も、患者が引き続き診療を受けている(=現院長・新院長間でしっかりと引継ぎが行われている)ということが条件になります。

弊社がご支援したケースのほとんどでも、新院長に実際に診察に加わっていただき、患者の引継ぎを行う形をとっております。

遡及の要件を満たすため、という側面もありますが、先生が交代した途端患者が離れていってしまった…という事態にならない為にも、
営業権という対価を受け取る以上、しっかりと引継ぎを行う責務があると言えるでしょう。

<ポイント>親子間継承でも同様の手続きが必要

後継者は子供に決めているから単に院長を交代すればよい、とお考えの先生もいらっしゃいますが、
個人立のクリニックの場合は、親族間での継承においても同様の「閉院・新規開設」の手続きを踏む必要があります。

また、引退や継承を考える時期は、相続を考える時期とも重なります。
先生に万が一のことがあった場合には、クリニックの財産と債務を洗い出し、「後継者はだれか」「事業に必要な資金をどうするのか」「借金やリースなどの債務はどうするのか」、そしてそれらを承継するのに必要な手続きは何か?など検討すべき事項は多岐にわたります。

このように個人立のクリニックの院長に相続が発生した場合は、後継者の有無を問わず検討事項が多く複雑となります。
費用はかかるものの、専門家を交えて早期に後継者が医療に専念できる環境を整える方が、良い結果にはつながる可能性は高まります。

■運営形態によって最適な継承方法は異なります

今回は主に「個人立のクリニック」が「勤務医の先生」へ継承するケースをご紹介させていただきました。
他にも個人立のクリニックを医療法人が分院として継承するパターンなど、それぞれの運営形態ごとに適した継承方法がございます。

また、メディカルトリビューンが提携する日本医業総研は、グループに医業に特化した税理士法人を有するため、後継者探しだけではなく、税務・会計面でのご支援も可能です。
ご勇退に際してお悩みやご質問などがございましたらお気軽にお問合せください。