継承診断ではどのようにクリニックを診断している?

クリニック継承について、売り手となる側で準備が必要な資料は多岐にわたります。先生によっては、財務諸表などは顧問税理士に任せっ切りにしており連絡して取り寄せなければならない、というお話を聞くこともありますが、こうした資料はクリニックの経営状態を把握する為の一次情報となりますから、継承を進めるうえで必要不可欠なものです。

患者の診察に置き換えてみれば、いわば身体状態や既往歴などのデータにあたり、
こうした情報抜きで譲渡額をいくらにすべきか?継承先が見つかるかどうか?などを判断することは困難ですし、
仮に募集を行ったとしても、買い手候補が見つかる可能性は非常に低いと言わざるを得ません。

■継承コンサルタントはどういった点を確認する?

以前、「医院の後継者探し、何から始めるべき?」でも直近数値(売上・利益)の作成や、財務諸表(BS、PL、CF)を整理しておきましょうとご紹介しましたが、弊社のような継承コンサルタントはその情報をもとに以下のような観点で確認していきます。

<確認ポイント例>
  • ・リース残積などの帳簿外の債務はどの程度あるか?
  • ・過去3か年でお金の動きで不透明な点は無いか?
  • ・過去3か年で売上や利益がどう推移しているか?
  • ・テナント契約の内容で、第三者への譲渡を制限する事項等が無いか?
  • ・・・etc

これらはほんの一部ですが、第三者継承を中断せざるを得なくなるリスク等が潜んでいないか?様々な観点からチェックしていきます。

また、多くの先生から「営業権をいくらに設定すべきか?」というご質問をいただきますが、弊社の場合は、決算情報をもとに年間で実質的な利益がどの程度出ているのか?を起点に算出します。

この実質利益という言葉は、純利益とは異なるM&A特有の概念であり、先生自身が取得している役員報酬分や節税目的の支出などを含めた利益額のことを指します。

その為、単に確定申告書や決算書の額面だけを見ただけでは、実質利益が見えない場合がほとんどです。

例えば、個人立クリニックの場合には、MS法人などで収益分散をしているのであればその利ザヤ分をクリニックの利益に合算する、医療法人の場合は、経費項目となっている役員報酬分を経費から除外する、積み立て方式の生命保険に加入している場合は、保険料分を利益に合算する・・・等、仮に買い手の先生が引き継いでクリニックを経営した場合、勤務医時代の収入に比べてどのくらい手取り分が増えるのか?といった、買い手目線での投資メリットをわかりやすいようにしていきます。

医院継承を専門としていないM&A仲介業者の場合、直近3か月分の売上総額をベースとする方式を採用している場合がありますが、重要な視点は売上ではなく利益だと考えています。

例えば、院内処方を行っているクリニックで売上はあがっても薬価利益はあまり見込めず、逆に設備投資や在庫管理などが運営の足を引っ張ってしまっているケースや、診療報酬に比べてアンバランスに高い賃料が発生しているケースなど、収益改善が容易でないクリニックもあります。つまり売上をベースにしていては、買い手側からすると、承継後の収入をイメージしづらく、候補者が見つかっても継承まで成立しづらいというのが弊社の考え方です。

このような資料は、顧問税理士が保管している場合も多く、スムーズに進めるために、先生に許可をいただいき弊社と税理士間で直接やり取りをさせていただいているケースもございます。常日頃から整理しておき、また周囲へ共有しておくことが大事だと言えるでしょう。

■万が一に備えて継承診断をご活用いただく先生が増えています

クリニックの9割近くが、後継者が不在であったり、継ぐ意思がないという調査結果もございます。※日医総研ワーキングペーパー「医業継承の現状と課題」より
医師の価値観が変化しつつある今、親族間継承だけに固執せず、第三者への継承も柔軟に検討していく必要があると言えるでしょう。

また、閉院すべきか?継承を模索すべきか?迷わている先生も多くいらっしゃることと存じます。
弊社では、ご勇退時期や譲渡額の目安が分かる、継承診断サービスを無料でご提供しておりますので、併せてご活用いただけますと幸いです。