閉院時にはどんなコストが掛かってくる?不動産編

前回は、閉院時にかかってくる費用をテーマに、医療機器などの撤去コストについてご紹介しました。
今回は、閉院費用の中でも多くの割合を占める、不動産関連で発生する費用について詳しく見ていきましょう。

■テナントと自己所有の場合で閉院コストの考え方は変わってくる

(1)テナントの場合

テナントで開業している場合、現状復帰対応が必要となります。

賃貸契約書の内容を見て、契約期間、中途解約条項、保証金返還条項、現状回復と明け渡し条項などを確認しましょう。

「現状回復と明け渡し条項」を確認すると、現状復帰の為に必要な工事内容が分かります。
①スケルトン(コンクリート打ちっ放しの状態)
②事務所仕様
上記のうち、どちらに戻す必要があるのかによって、費用及び工期が変動してきます。

*工事費用イメージ
スケルトン戻し 5~10万円/坪
事務所仕様戻し 10~15万円/坪
クリニックの仕様や、設備、施工会社等によって異なりますので一概には言えませんが、概ね上記の費用感となります。

また、契約期間中の解約となる場合、空家賃が発生します。

(2)自己所有の場合

「うちは自己所有だから現状復帰とかは考えなくていいよね」という先生も中にはいらっしゃいます。
自宅兼診療所となっており、閉院後もそのまま住居として利用し続ける場合は大きな問題ではありませんが、
閉院後の具体的な活用プランをお持ちでない場合は、維持コストがどのくらいになるのか?をしっかりと計算し把握しておくことをお勧めします。

土地に空き家がある場合、土地と空き家に対して固定資産税や都市計画税がかかります。
納税額は固定資産税が課税標準額×1.4%(標準税率)、都市計画税は課税標準額×上限0.3%となります。

上記に加え、家が建っている土地に対する特例で固定資産税・都市計画税ともに以下のような減額措置が適応されます。

納税額は課税標準額により上下するため、以下2通りの方法にて調べる必要があります。

①納税通知書を確認

毎年4~6月あたりに自治体から届く通知書を確認するのが、もっとも簡単に固定資産税を調べる方法になります。

②路線価から固定資産税を計算

通知書が見つからない場合は以下方法で課税標準額をしらべ、上記の表に従い計算します。

課税標準額は、課税明細書にある固定資産税課税標準額と記載されている部分を確認する、固定資産課税台帳を閲覧(ただし、閲覧できるのは所有者・相続人・借地人などに限られ、閲覧する際には本人確認書類と手数料が必要)するといった方法で調べることができます。

*[参考]空き家の固定資産税は6倍になる?

空き家の場合、固定資産税が6倍になってしまう、という話を聞いたことはありませんでしょうか?
これは、特定空き家として認定されてしまった場合、家が建っていることで受けられる固定資産税の減税の対象外になってしまうことで発生します。

特定空き家に指定される可能性があるケース

・適切な管理がされておらず、周囲の景観を損なう
・そのまま放置すると、衛生上有害となる恐れがある
・そのまま放置すると、倒壊の危険性がある

これは空家対策特別措置法が平成26年11月に成立したことによります。
また、特定空き家に指定された後、行政指導も無視している場合、行政執行の対象となり、強制的に空き家を解体され、解体費用は所有者が支払うことになります。

*特定空き家の指定を防ぐには?
指定されない為には空き家の適切な管理が必要となります。

・管理方法の一例(月1~2回程度)

空き家の窓を開けて換気
郵便物の回収
建物にひび割れなどがないかチェック
庭の草むしりや野良猫のフンの除去
ゴミの処分(不法投棄等があれば)

所有し続ける限り管理コストは発生し続ける為、専門の管理会社に依頼するといった方法も検討しましょう。

今回は原状復帰費用及び、自己所有の場合の維持コストに注目してご紹介しましたが、
自己所有の場合には相続の際に発生するコスト(相続税や登録免許税)も考慮が必要です。前もって調べておきましょう。

■閉院や継承のお悩み、ご相談ください

高齢や健康上の問題でクリニックを閉鎖しようと思った場合、容易ではありません。
開業の時は、さまざまな業者が無料で手伝ってくださいますが、閉鎖の場合、業者にとって商品を買ってくれるお客様ではなくなるため、協力してくれる業者も少なくなってしまいます。

メディカルトリビューンでは、閉院や継承に関するご相談を無料で承っている他、閉院準備をテーマにしたセミナーも開催しております。先生のご状況に合わせご活用いただければ幸いです。