閉院時にはどんなコストが掛かってくる?退職金編

前回は、閉院時に発生する現状復帰費用や不動産の所有不動産の維持費用等についてご紹介いたしました。

今回は閉院時に想定されるコストのうち、退職金の支払いなど、人事労務関連で把握しておくべき内容についてご紹介いたします。

■退職金制度の位置づけとは

閉院や継承のご相談をいただく際によく聞かれるのが、「退職金ってどうしたらいいのでしょうか」というご質問です。

意外と知らない方もいらっしゃるのですが、実は「退職金制度」「退職金の支払い」は法律で定められているものではありません。
退職金制度があるかどうかは、就業規則(退職金規程)や労働協約の定めであり、また具体的な支給内容についても、一律の決まりはありません。

一般に退職金制度は勤続年数が長いほど支給倍率が高くなるよう設計されており、従業員の定着向上を図ったり、採用効率を高める効果を狙って導入するものとなります。

そのため、個人立のクリニックでは退職金の規定が無いということも珍しくありません。

■退職金を支払う場合の基準は?

前項のように、退職金制度は法律で義務付けられたものではありませんが、
これまで長らくクリニックの運営を支えてくれたお礼という意味合いを込めて、大なり小なり支払ってあげたいと考える先生もいらっしゃいます。

その際に、どのように金額を決めればいいのか?という基準が必要となりますが、
以下に弊社と協業している日本医業総研様のグループ会社の一つである、「社労士法人 日本医業総研」が参考に用いている退職金テーブルを一例としてご紹介します。

上記をベースに、退職時基本給×支給率として支給額のベースとして参考にしていただければと思います。

■有給未消化日数や残業代の未払い分がある場合は要注意

また、人事労務関連で閉院時に注意しなければならないポイントとして、有給未消化日数や残業代の未払い分がないか?が挙げられます。

クリニックによっては最低限の人数でぎりぎりの体制で運営している場合も多く、
労基法で定められている有給休暇分が消化しきれていない場合や、残業時間分をしっかりと記録・管理していないという場合もあると思います。

従業員にとっては、権利を行使できなくなることになりますから、このタイミングで、まとめて有給取得をしようとしたり、未払い分の残業代を請求したりするケースも考えられます。

閉院後の片付けなどにお人手は必要になりますから、計画的な有給取得の奨励や、
場合によっては有給未消化分の買取(※原則として認められていない為、最大限やりくりした上で)、診療時間の縮小などで対応する必要があります。

また、残業代の未払い分がある場合は、労働基準監督署に駆け込まれて業務改善命令が出てしまう…といった事態に発展しかねませんから、慎重かつ十分な合意形成を行いましょう。

■閉院と人事労務周りの問題はセットで考える

有給や残業代などの人事労務関連は人が絡む問題であるため、トラブルにつながりやすいと言えます。
閉院を考え始めたならば、実際に従業員に告知する前に、整理・改善をした上で臨まれることをお勧めいたします。

また、弊社では、今回ご紹介した内容に加え、閉院を検討する際に必要な準備がわかる、「クリニックの閉院準備セミナー」を積極的に開催しております。

是非こちらも併せてご活用ください。

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■閉院や継承のお悩み、ご相談ください

高齢や健康上の問題でクリニックを閉鎖しようと思った場合、容易ではありません。
開業の時は、さまざまな業者が無料で手伝ってくださいますが、閉鎖の場合、業者にとって商品を買ってくれるお客様ではなくなるため、協力してくれる業者も少なくなってしまいます。

メディカルトリビューンでは、閉院や継承に関するご相談を無料で承っている他、閉院準備をテーマにしたセミナーも開催しております。先生のご状況に合わせご活用いただければ幸いです。