クリニックの事業計画書はどうやって書く? – 収支計画編 –

前回は、クリニックの開業にあたり必要となる資金計画の立て方について解説いたしました。

今回は引き続き、開業後の収入予測およびランニングコストなどの収支計画の立て方について見ていきます。

■収支計画はこうやって立てる

(1)収入を大まかに予測するには

まずは、開業後にどの程度収入が得られるのか?を予測していきます。
開業後の指標にもなりますから、当然感覚で数値を決めていくのではなく、ある程度根拠ある数値を算出していきます。

収入の基本的な考え方は、
1日当たりの患者数 × 1人1日当たりの診療単価 × 診療日数
という計算式です。

「1日当たりの患者数」「1人1日当たりの診療単価」をどう算出すればよいのかという点ですが、広く使われているものとして、診療圏調査があります。

基本的にクリニックを中心に円を描き、患者の行動範囲を示すもので、町丁別診療圏内の人口に診療科ごとの受診率を掛け総患者数を割り出します。
この円の半径は一般的な内科であれば概ね500mから1㎞、競合が少なく、専門性の高い医療を提供するに連れて広く設定することができます。
簡易的なシミュレートができる市販の診療圏ソフトは厚労省が発表する人口動態調査がベースになっていますが、リアルタイムなアップデートはされておらず、国勢調査のデータが元になっているため、その精度は参考程度と考えておくといいでしょう。
実際の診療圏は、生活動線、幹線道路との位置関係、橋梁の有無等の影響を受けますから、正円形の診療圏を形成することはまずありません。
より現実的な計画を立てるためには、地域の人口動態、競合クリニックの状況などのデータを把握している、開業コンサルタントのサポートを受けることをお勧めします。

また、診療単価についても診療科目によって設定できますが、2年に一度の診療報酬改定でも平均値としては大きな変化は少ないため、こちらは厚生労働省のデータを参考にしてもよいでしょう。

※平成30年度 医科診療所の主たる診療科別の医療費等の状況
https://www.mhlw.go.jp/content/000589100.pdf

最後は診療日数です。週休2日を基本とした場合、祝祭日も加味し月間の稼働診察日を20~21日とするのが一般的です。

(2)適正なランニングコストとは

次に支出の面を検討していきますが、大きな額から計算していくと進めやすいでしょう。
最も費用がかかる人件費は、一般的には収入の15%程度に収めることが適正といわれています。
看護師、専門技師、受付事務など必要なスタッフの職種を羅列し、月額給与、賞与等を計算します。
給与(時給単価)は、医療機関や特定の職種を専門に扱う求人情報メディア等で相場を調べることができます。

そして、固定費及び変動費も試算していきます。
主な固定費は、家賃、水道光熱費、借入金利、リース料など売上の増減にかかわらず発生する一定額の費用を指します。
変動費とは、診療行為に伴い、増加する医薬品費や診療材料費、検査外注費などのことです。
実際の変動率は、診療内容や診療方針により変わりますが、診療科ごとに平均値がありますので、それを参考にして計算していきましょう。

最後に、大切なのは医師本人と家族の生活費です。
個人立のクリニック院長には、毎月の固定的な「給与」という概念はありません。
開業当初から勤務医時代の収入を得ることは難しいでしょうが、生活費、教育費、住宅ローンの支払いなどもありますので、ライフプランと生活水準に合わせた資金を確保しておかなければいけません。
事業計画上では、「事業主貸」の項目で70~80万円程度を計上しておくことが一般的です。

(1)- (2)がそのクリニックの営業利益となります。採算が合わないと判断される場合は、立地選定(契約物件)の見直しのほか、設備投資の内訳、診療内容等も再考することになります。
専門コンサルタントや税理士などの意見も取り入れながら計画を練りましょう。

■事業計画書の作成は専門家へご相談ください

いかがでしたでしょうか。
事業計画書の作成は大変なことではありますが、金融機関に融資の相談や開業後の経営方針に影響しますので、クリニック開業と運営を成功させるための羅針盤だとよくいわれます。
一人で事業計画書作成を進められる医師もいらっしゃいますが、収支計画や資金繰りといった金銭面のつめが甘くなりがちで、そのままでは金融機関の担当者に納得してもらえないことがほとんどです。より説得力のある計画書を作成するには、専門家からサポートを受けたほうが良いでしょう。

弊社と提携し、クリニックの開業・経営をサポートさせていただく日本医業総研はグループ内に税理士法人や社労士法人を有するクリニック経営に特化したコンサルティングファームです。

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