引継ぎ後、患者さんが離散してしまった…
クリニック開業を検討されている先生の最大の心配は、開業後の集患でしょう。
基本的に 「診療報酬単価×患者数 = 売上」というシンプルな計算式によってクリニックの売上は決まってきます。「値決めは経営」ともいわれますが、保険診療を提供する医療機関における診療報酬は公定価格制です。よって、「開業後に事業計画通りの患者さんが来てくれるだろうか……」という不安はもっともだといえます。
一方、近年注目されている「事業承継」による開業ですが、これはすでに一定の患者さんが定着したクリニックを引き継ぐため、ゼロベーススタートとなる新規開業の集患リスクを回避できることが最大のメリットとなります。
しかしながら、承継するタイミングの前後でしっかりと前院長からの引継ぎや、引継ぎ後の離散防止対策を講じなかった結果、前院長時代から大きく患者数が落ち込んでしまったというケースも聞かれます。
今回は、承継開業で押さえておきたい「引継ぎ後の離散防止対策」についてご紹介いたします。
■平均約2割の患者が離散
一般的には、引継ぎ直後に一定数の患者さんの離散が予想されることから、弊社では原則的に約2割減の想定で事業計画を立案します。
この2割というのは、前院長に全幅の信頼を置く固定的なファンともいえるものですが、院長交代への不安から他のクリニックへの受診を検討される患者割合を置き換えた数値です。クリニックの選択肢の多い都市部では、なおさらこの傾向が強くなると思われます。
事業継承で引き継ぐのは、目に見える経営数値だけではありません。
前院長がどんな思いをもって、どのような医療提供に心がけてこられたのか。それに対して、患者さんは当院のどこに満足感を得て、長年、あるいは遠方からわざわざ通院されてきたのか。その医療提供者と患者の信頼関係にこそ引き継ぐ最大の財産があります。
前院長との引継ぎのヒアリングでは、こうした「暖簾」のストーリーを強く意識しながらの情報収集に努めたいものです。
・前院長の診療方針、人柄やコミュニケーションスタイルをしっかり確認し、新院長が十分に認知され根付くまでは「完全コピー」に努める
・引き継ぎ期間を長く設け、前院長と並走しながら少しずつ患者さんの引継ぎを受けていく
・患者への事前予告や説明を丁寧に行う
・引き継ぎ後も前院長には一定期間非常勤医としてサポートしてもらう
などがあげられます。
新院長が独自の個性を打ち出し、医療提供上の強みとして発揮するのは、上記のプロセスを経た後のフェーズだと認識し、継承後の約半年間は緩やかな移行期間と心得ることが大切です。
■リスクを回避し、スムーズな医院継承をするために
今回は引継ぎ後の患者離散、つまり集患についてのリスクをご解説しましたが、実際には、「継承後に事前説明のない簿外債務が発覚」「引継ぎ直後に近隣に競合医院ができてしまった」「引き継いだスタッフとの相性が悪く人事管理に悩む」「過去に不透明な診療報酬請求があった」など、思いもよらないリスクが潜んでいることがあります。
専門知識を持ち、かつ医院継承に経験の豊富が専門家に相談することにより、これらのリスクを大きく回避することができますので、医院継承を進める前には一度相談してみたほうが良いでしょう。
弊社と提携し、クリニックの開業・経営をサポートする日本医業総研はグループ内に医業特化した税理士法人や社労士法人を有するクリニック経営に特化したコンサルティングファームです。
これまでに600件近くのクリニックの開業・経営をサポートした実績から、承継開業のリスクを事前に予想してできるだけ回避し、クリニックの経営を軌道に乗せて成功に導くノウハウを有しています。
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