承継開業でスタッフが一斉退職!?

承継開業のメリットは、患者さんを引き継いだ状態で開業できる、クリニックの建物や内装、医療機器等の事業に関連した数値化できる有形資産を引き継ぐことで初期投資を抑えられる、という点が重要視されますが、見落としてはならない大事なポイントは、クリニック診療を理解する優秀なスタッフを引き継げる、という点です。

今回は、承継開業に関してスタッフの引継ぎについて詳しく見ていきましょう。

■スタッフを引き継ぐ、その利点は

実際に弊社が支援した事例をみても、承継開業される先生のほとんどが、スタッフの継続雇用を選択されています。

前回ご紹介したとおり、医療法人や、譲渡条件に盛り込まれている場合は、継続雇用が前提となりますが、
付帯条件のない個人経営クリニックでも同様です。

それはなぜでしょうか?
クリニックを承継する側の立場として一番肝心な部分は、承継後も患者さんが離脱することなく、通院を継続していただけるかです。
かかりつけ医としてクリニックを選ばれる患者さんは、院長への信頼とともに、受付や看護師などとの顔の見える関係に安心感をいだかれます。
病院で勤務されている先生方もサポートスタッフの重要性は先刻承知なのでしょうが、クリニックの場合が、スタッフと患者さんとの距離感がより親密だということです。

ところが、事業承継によって院長どころかスタッフも入れ替わってしまった、としたらどうでしょうか?
患者さんにとっての通い続ける理由が、近所にあるから、というだけではかかりつけ医ということにはなりません。
病院とは違い、クリニックで提供される医療は、人的サービスそのものといえます。スタッフのなかには、「先生の考え方と合わない」「なんとなく、相性がよくなさそう」……、と感じられる人もいるでしょう。前職からの流れで、気心の知れたスタッフを新たに採用したいということも頷ける話です。
それでも、患者さん本位で物事を判断するのであれば、まずは既存スタッフを大切にすることを基本に検討することをお勧めします。

信頼関係を損なうことなく患者さんを引き継ぐ、その意味でもスタッフの継続雇用は大きな意味合いを持つのです。

■スタッフの離職を防ぐためにできること

スタッフは、現院長や職場環境、やりがい、雇用条件に満足しているからこそ、長年クリニックで働いてこられた方ばかりです。
その為、承継によって院長が変わるとなれば「勤務環境はどう変わるのだろう」「雇用条件は変わってしまうのだろうか」という不安をいだくのは自然な反応です。

承継によるスタッフの離職を防ぐには、面談を通じてこれらの不安を払拭すること、適切なタイミングでアナウンスをすることが重要です。

  • 承継数か月前に実際に非常勤として入り、現院長から紹介をしてもらい関係性を築く。
  • 個別面談の機会を持ち、雇用条件だけでなく自身が院長として目指す姿や理念、スタッフへの期待などしっかりと伝え、コミュニケーションを図る。

こうした対策が重要でしょう。

長年働いてこられた人を敬い、最大の配慮をしつつ、伝えるべきことを伝え、関係性を構築した上で開業することが成功につながっていきます。

■開業に関するご相談、承ります

弊社と提携し、クリニックの開業・経営をサポートさせていただく日本医業総研はグループ内に税理士法人や社労士法人を有するクリニック経営に特化したコンサルティングファームです。

また、これまでに600件近くのクリニックの開業・経営をサポートした実績から、クリニックの経営を軌道に乗せ、成功に導くノウハウを有しています。

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