クリニックの開業にはどんな開業形態があるの?

今回は、「クリニックの開業にはどんな開業形態があるの?」と題しまして、戸建て開業・テナント開業・医療モールでの開業について、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

クリニックを開業する際、まずはどんな事を強みにして医療を提供するのか「経営理念」を明確にしておくことが重要となります。
そして、その理念を実現するためには、どのようなクリニックをつくる必要があるのかを具体的に検討していくことが次のステップとなるでしょう。
検討するにあたっては、ハード面・ソフト面における様々な「クリニックの開業形態」をあらかじめ知っておくことで、構想の選択肢も増えるのではないでしょうか?

◆設計の自由度が高い「戸建て開業」

開業形態を建物別に大きく分けると「戸建て開業」と「テナント開業」があります。
戸建て開業は、土地を購入して新規でクリニックを建てる形態なので、地価が安い地方や郊外住宅地で比較的多くみられるスタイルです。
その最大のメリットはなんといっても施設設計における自由度の高さではないでしょうか。
例えば、整形外科クリニックにおける運動器リハビリテーション室など、施設基準をクリアしなければならない広さが必要な場合にも対応できます。
また、昨今における新型コロナウイルスの流行に伴い、感染予防のために入り口を二つ設けたいなど、さまざまなニーズに対応可能です。
さらには、駐車場スペースを確保することで、遠方の患者様にも通ってもらいやすくなるといったメリットもあります。

しかし、土地を購入し建物を建築するとなれば初期投資額はその分大きくなりますし、固定資産の購入費用は当然経費化できません。
この初期投資額を軽減させたい場合は、土地のオーナーにクリニックを新築してもらい、土地・建物をまとめて賃借する「建て貸し方式」も一つの選択肢としてあります。
ただ負担が軽減できる「建て貸し方式」であっても、内装工事や建物の建築費用の一部負担を求められるケースも多く、コストは決して小さくはないというのが実情です。
さらには、契約期間が20~30年と長期になることから、将来的な市場動向や先生とご家族のライフプランを見定め、ご検討されることをお薦めします。

◆好立地を確保しやすい「テナント開業」

一方で、ビルなどに入居して開業するテナント開業は、都市部ではよく見られる開業スタイルです。
比較的アクセスしやすく患者様の通院の利便性に優れた場所でのクリニック開業を検討するならば、断然テナント開業の方が物件探しは容易でしょう。
特に、皮膚科や精神科など広いスペースを必要とせず、比較的診療圏が広範囲にわたる科目の場合は、テナント開業のメリットが大きいと言えるでしょう。
もちろん、初期投資額も戸建て開業に比べれば少なくて済みます
それでも、保証金や内装工事費用などで数千万円程はかかるのが一般的です。
また、更新ごとに賃料が上昇するリスクがあったり、そもそもクリニックの開業には向いていない物件があるということも念頭に入れておいた方がよいでしょう。

◆地域での認知度が高い「医療モール」

「医療モール」とは、テナント開業の中でも、多様な診療科目のクリニックが狭いエリアの中に集まって開業する集合型開業という形式のことを言います。
この医療モールでの開業のメリットは、なんといっても複数のクリニックが集まることで生じる相乗効果です。
一般的に調剤薬局が開設するケースが多いことから、院外処方が主流となっているクリニックにとっては入居しやすく、患者様の移動の手間も省かれます。
特に高齢の方は、内科や整形外科、眼科など同時期に複数の診療科を受診されていることが多くこれらの通院を一度の移動で済ませられる医療モールは大変利便性が高いのです。
さらに、複数のクリニックが集まることで地域での知名度も高まります
アクセスの面でも、駅周辺や住宅街の生活動線に面する場合が多く、共同駐車場の整備や
全面バリアフリーなどの配慮が施されているケースが多いのも特徴です。
ただし、標榜科目は異なっていても、花粉症薬の処方やワクチン接種などといったクリニック間での“すみ分け”が難しく、テナント間でのトラブルにいたるケースもあるので注意が必要です。

◆昨今の時代ニーズに合わせた「在宅専門クリニック」

また、最近増えてきた開業形態というのが、在宅医療に特化したクリニックです。
国も、高齢化社会を背景にした在宅医療の整備に注力しており、この数年でも診療報酬上の在宅医療を手厚く評価する傾向がみられます。
今後さらに、その傾向は続くと言われており、新規開業のスタイルとして狙い目と考える医師も多いようです。
在宅医療に特化したクリニックをつくる場合は、通常の開業とは異なり、スペースが狭くて済みます。
中には、マンションの一室を拠点に開業するケースもあり、当然ですが初期投資額は前述にあげた「戸建て開業」や「テナント開業」に比べ大きく軽減できます
ただ、この在宅医療に特化したクリニックも、周囲の医療機関や介護事業所とのネットワークづくりという面では非常にハードルが高く、ある程度の経験と適性を備えた医師でないと難しいのではないでしょうか。
集患の為には、医師自らが病院や地域のケアマネジャー、介護保険施設、訪問看護ステーションなどを回り、対応できる患者様や得意分野などを伝える「営業活動」を精力的に行い、患者様を紹介してもらう必要があります。
また、病院からの紹介患者様には終末期の高齢者も多いことから、看取りへの対応も必須と考えておいた方がよいでしょう。

◆クリニック開業は「新規開業」と「承継開業」を並行して検討するのが

現在、全国的に見れば開業医の数自体は飽和状態にあり、「開業向けの物件自体が中々見つからない」という話は珍しい話ではなく、都市部エリアでは特にその傾向が顕著です。
開業をお考えの先生は、新規開業と比べてさまざまなメリットのある「承継開業」も選択肢の1つとしてお考え下さい。

弊社と提携し、クリニックの開業・経営をサポートさせていただく日本医業総研はグループ内に税理士法人や社労士法人を有するクリニック経営に特化したコンサルティングファームです。

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