◆トラブル事例◆クリニックの譲渡先は決まったが…問題発生!?

 

今回は、「クリニックの譲渡先は決まったが…問題発生!?」と題しまして、クリニックの継承に潜むトラブルについて、1つの事例を取り上げ解説してまいります。

◆クリニックの継承に潜むトラブルとは?

昨今、医療法人が事業拡大を検討する際、「新設」ではなく、既存のクリニックを「継承」して分院展開を行うケースが増加傾向にあります。今回は、医療法人がクリニックを継承する際、一体どのようなトラブルが潜んでいるのか? とある事例をもとに詳しく見ていきましょう。

◆譲渡先は決まったものの

あるクリニックを個人経営するA先生は、体力の衰えに伴い、勤務医師のB先生を副院長に据えて診療を継続しておられました。

その後、A先生の引退意向が高まり、B先生に継承を打診してみたのですが、「継続勤務は可能だが、クリニックを継承するつもりはない」と断られてしまったため、第三者継承を検討することになりました。

さっそく、A先生はご自身の人脈を使い、知人を介して後継者を探したところ、分院の展開を考えている医療法人が興味を示しているとのことでした。そして、「B先生の再雇用・管理医師への就任」を前提条件に、A先生・医療法人の両者で譲渡条件・再雇用条件について協議を行いました。

両者間で合意形成ができたため、いよいよ事業譲渡契約を締結することになりました。

B先生にはA先生が口頭で譲渡条件・再雇用条件の説明をおこなっていましたが、経営権を譲る1週間前になり、B先生と医療法人の間に再雇用条件について認識の行き違いが起こっていることが判明。急いで、三者間で協議を行いましたが、平行線のまま一度できてしまった溝は埋まることはなく、継承の話は破談となってしまったのでした。

さらに、このことがきっかけでA先生とB先生の長年の信頼関係も崩れてしまい、B先生は退職、A先生のクリニックは廃業の道を辿ることになってしまったのです。

◆このようなトラブルを未然に防ぐために

今回ご紹介した事例に限らず、クリニックの継承には、様々なトラブルが潜んでいます。とくにスタッフの雇用に関しては、それぞれに生活や経済的な事情もあるので、慎重な対応が大切です。

事例で取り上げたクリニックは個人立ですので、クリニックの廃止とともにB先生は解雇、分院の開始に合わせて医療法人との新たな雇用契約となるのが原則です。今回、破談に至ってしまった要因は、「承継後に管理医師となるB先生との認識合わせが不十分だった」ということですが、承継する医療法人の就業規則や給与規定などの事前の理解がないままに、ディール(契約)だけを先行させてしまった結果といえます。

近年のM&Aでは、財務諸表として数値化されない「人的資本」の評価を重視する傾向があります。人はコストではありません。いわんや、医療法人が分院展開を進める場合、そこで働く管理医師は必要不可欠な存在です。 このようなケースでは、売主・管理医師・買主の3者同席の場で協議を行い、認識の齟齬を起こさないよう進めることが肝要です。

◆引退や継承に関するご相談、無料で承ります

クリニックの第三者継承は、円満なご勇退を迎える為の方法として徐々に認知されつつありますが、こうしたトラブルを未然に防ぐためには、クリニック特有の事情に精通した仲介業者の支援が必要不可欠です。

弊社では、これまで600件以上のクリニックのご支援を行っており、今回の事例のような「医療法人に個人立のクリニックを譲渡する」といったケースでのご支援実績もございます。中立的な立場からクリニックの診断・譲渡額を査定させていただく他、医師間で起こりやすいトラブルへの対処方法などのノウハウもございます。また、継承に関するご相談も無料で承っておりますので、是非ご活用いただければ幸いです。