クリニックの開業。承継開業を選ぶメリットって？

今回は、「クリニックの開業。承継開業を選ぶメリットって？」と題しまして、承継開業するメリットについて集患やコストの面から詳しく見てまいります。

まず、クリニックの開業というと一般的にイメージされやすいのは「新規開業」ではないでしょうか。
新規開業は、いうまでもなく建物や内装、医療設備・機器といったハード面は勿論、そこで働くスタッフもすべてが新しい状態で、一から開業をスタートする開業方法です。
“心機一転”して フレッシュな環境で始められる新規開業ではありますが、一方で「集患」の面では不安があります。
開業して間もなくは、事前告知や内覧会効果などから、右肩上がりの来院があり、初診料の上乗せも相まって「このペースでいけば安泰だ！」と安心したものの、地域の口コミ評価にはなかなか至らずに伸び悩むことは決して珍しくありません。

診療科や施設・設備によっても異なりますが、開業にかかる初期費用や、家賃、人件費、光熱費、リース料…などの運転資金を勘案すると、1日あたりコンスタントに30人以上の集患ができなければ黒字経営は望めません。
病院勤務医以上の可処分所得を得ようとすると（そうでなければ開業の意味がありませんが）さらに集患のハードルは上がります。

新規開業は、「ご自身で全て決定し、一からスタートする」＝「自分の理想の城を築くことができる」のが魅力ではありますが、このように集患の面では大きな課題があるのが実情です。

では、ここからは「スタッフの採用」「集患」「医療設備・機器」の３つの観点について、新規開業と承継開業を比較し、それぞれのメリット・デメリットをみていきましょう。

＜スタッフの採用＞
新規開業の場合は、「スタッフの採用」を一からご自身で行う必要があります。
採用活動の負担はありますが、雇用条件や自分との相性などを含め、理想に近い人材を選ぶことができるのは新規開業のメリットです。

一方で承継開業の場合は、前クリニックに勤めておられたスタッフの方を引き継ぐことが基本です。
「採用活動を行わなくてもよい」、「業務に慣れている」、「患者様と面識がある」などのメリットはございますが、長く勤めておられる職員の方の給与水準の高さや考え方が合わない、電子カルテの操作経験がないなど課題も想定されます。

＜集患＞
前述のとおり、開業における大きな課題が「集患」です。
新規開業の場合は、折込みチラシやポスティング、内覧会の実施、ホームページの開設や広告などを活用し、徐々に認知度を高めていく、ゼロからの地道な努力が必要です。
加えて、「競合の有無」「通院の利便性」などの“立地条件”が重要なポイントとなります。
より良い立地条件の物件を見つけるのに1年以上の時間をかけるケースもまれではありません。

承継開業の場合は、既存クリニックから患者様をそのまま引き継ぐことができ、開業初日からある程度の集患が見込めるので、初月から一定の収益が期待できます。
さらに、患者様側からすると継続して通院が可能なので、かかりつけ医を失わずに済みます。
承継開業の場合、診療圏内の競合医院がある中でその患者数を確保しているため、競合の存在をそこまで気にしなくて良いこともメリットの一つです。
（ご参考）：＞かかりつけ医を引き継げる、承継開業のメリット

＜医療機器・設備＞
新規開業の場合、医療機器・設備などは、メーカー、機能、スペックなどをご自身で選定することができます。
これらの購入は、大抵の場合は金融機関からの融資やリースを活用することになります。
選択の自由がある反面、コスト面では高額になってしまうところが懸念点ではないでしょうか。
（ご参考）：>開業準備。医療機器はリースにすべき？購入すべき？

承継開業の場合、こういった設備は前クリニックから引継ぐことで、導入費用を考えなくてもいいのがメリットです。
ただし、既に何十年も使用しているケースが大半で、承継後数年以内には買い替えが必要となります。
新規開業と異なるのは、この買替え費用は、既に利益が出ているところから支払いができるため「借入金」の負担感は大幅に軽減されるという違いがあります。

いかがでしたでしょうか。
新規開業と承継開業では考慮すべきポイントが大きく異なります。
また、どちらの場合でも、テナント物件の空き状況、開業ビジョンに合う承継案件と出会えるかどうか、が開業を成功に導くうえで重要となります。
ご自身の開業における優先順位を明確にしたうえで、新規開業と承継開業を平行して検討するのがよいと言えるでしょう。

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