◆失敗事例◆親子間継承でよくあるトラブル編

 

クリニックの継承は、「親から子に引き継ぐなら、第三者に継承するよりもスムーズにできる」とお考えになられる方も少なくないのではないでしょうか。しかし実際には、基本的な手続きの流れにおいて親子間(親族間)継承と第三者継承で大きな違いはなく、むしろ親子だからこそトラブルに発展してしまうケースも少なくありません。今回は、「◆失敗事例◆親子間継承でよくあるトラブル編」と題しまして、親子間継承におけるトラブル例と注意点について解説致します。

◆Aクリニックのケース

≪事例≫地方で30年以上に渡りクリニックを営んできた医療法人のAクリニック。理事長は70代後半になり、体力的にもきつくなってきたことを理由に、長年大学病院に勤務していた息子に継承することを決意しました。まずは引き継ぎを兼ねて親子二診体制で診療をスタートし、順調なように見えましたが、3ヶ月が経過し、ついに息子の不満が爆発。「クリニックは継がない!」と出て行ってしまいました…一体なにがあったのでしょうか。

≪解説≫親子間継承では、診療や経営の引き継ぎの為、最初のうちは二診制で診療を行うことがよくあります。後継者となられるご子息・ご息女とスタッフや患者様との間に、徐々に信頼関係が構築されてくると、完全にバトンを渡し、ご自身は潔く引退するというのが理想的な流れではないでしょうか。しかし実際のところ親子間継承でよく耳にするのが、「親が子の診療方針に口出しをしてしまう」、「スタッフが前院長側についてしまい孤立してしまう」など、引き継ぎ期間に親子の関係が悪化してしまい、結果的に継承が破談になってしまうというケースです。≪気を付けるべきポイント≫Aクリニックのような親子間継承での失敗事例は決して珍しいことでなありません。このようなトラブルを避けるためにも、院長には以下のようなポイントに気を付けてご子息・ご息女への継承を進めていただくことをお薦めしております。

ポイント①:親子で診療スタイルが異なることは当たり前親心から心配になることは沢山あるかもしれませんが、親は子の診療に細かく口出しをせず、忍耐強くそっと近くで見守る姿勢も大切です。そしてそれは引き継ぐ側の子も然りです。最新の医学知見や治療アプローチは子の方が優れているかもしれませんが、患者様が必ずしもそれを望んでいるわけではありません。長年地域の患者様を診てこられた「町医者」としての親の姿から学び、患者様からの信頼を得ていくことが重要でしょう。二診体制で診療を行いながら、徐々に親がフェードアウトしつつ、いかにして子の診療を患者様やスタッフに浸透させていくかが大切なのではないでしょうか。ポイント②:クリニック運営の決定権はきっぱりと子に委ねるいつまでも決定権が親のままではスタッフもどちらの指示に従うのか困惑し、結果的に前院長側についてしまいます。このような状況は、ご子息・ご息女が孤立してしまい、結果的に親子の関係やスタッフとの関係悪化にもなりかねませんので注意が必要です。ポイント③:クリニックの資産・負債や経営状態の現状を共有しておく厳しい経営状況を知らずに承継し、子が後になってから後悔するケースもよく耳にします。承継後にも安定した経営を実現するためには、顧問税理士などを交えてクリニックの資産・負債、財務状況などについても子にしっかりと引き継いでおくことが重要となります。また、顧問税理士をそのまま継続するのか、新しくご子息・ご息女が信頼できる方にお願いするのかについても継承のタイミングで見直しを検討される方も多いようです。

◆引退に際してのお悩み事はございませんか?

いかがでしたでしょうか。例えご子息・ご息女様などのご親族が医師でいらっしゃる場合でも、必ずしも親族内継承が約束されているわけではなく、まずは早めに引き継ぐ意思があるかどうかの見極めが重要となります。そして、本事例のように、親子間継承へと進んだ場合であっても、つい親心から子の診療スタイルに干渉しすぎてしまい、親子仲が悪化し、破談してしまうといったケースも少なくありません。弊社では、引退(閉院準備、第三者継承、親子間継承など)に関する無料の個別相談を承っております。少しでも関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。