クリニックの相続対策~娘婿に引き継ぐ場合~

今回は、「クリニックの相続対策~娘婿に引き継ぐ場合~」について解説致します。

◆Hクリニックの事例

HクリニックのH院長は、現在大学病院で勤務医として働く娘婿C氏を跡継ぎとして考えています。
C氏を養子として迎えることで子が相続する場合と同じ対策をとることも可能だと考えましたが、C氏のご両親は息子が婿養子になることには反対している様子…。
また、万が一夫婦関係がうまくいかなくなり離婚することになってしまった場合でも、一度婿養子としてクリニッを相続してしまうと、クリニックの財産を元に戻すことはできません。
一体どうしたものかと悩むH院長なのでした…。

◆相続対策のポイント

さて、Hクリニックの事例のように娘婿を婿養子として迎えることが難しい場合には、一体どのような相続対策ができるのでしょうか?
以下、4つのポイントに分けて見てまいりましょう。

ポイント①:娘婿にクリニックの財産を貸し付ける
H院長の生きているうちは娘婿にクリニックの財産を貸し付け、将来相続する際には、クリニックの財産は娘に相続し、その後は娘が夫(配偶者)に貸す方法があります。
娘が相続した後は、貸主と借主は夫婦関係にあるため、ほとんどの場合は生計一親族となります。
ですので、賃料を支払っても経費として勘定することはできません。
また、相続した娘の所得にもなりません。
ただし、生計一親族が所有する減価償却資産や土地建物等の固定資産税などは、借りる側(夫側)の経費とすることができますので、娘が相続した後は無償(使用貸借)で賃貸借するのがよいでしょう。

ポイント②:クリニックの財産を娘婿に贈与する
娘婿に贈与する方法は、経営権だけでなく娘婿にクリニックの財産が確実に渡ることになり、贈与税が高額になりがちです。
また、財産の所有権も娘婿に渡るため、万が一離婚することになった場合は争いの種になるので注意も必要です。

ポイント③:娘婿にクリニックの財産を遺贈する(遺言書の作成)
クリニックの財産を遺贈する方法による注意点は、相続税の2割加算が適用されてしまうという点です。
万が一、離婚することになった場合、院長の生前であれば遺言書を書き直せばよいだけの話ですが、相続後に離婚していまった場合にはポイント②と同様のリスクが生じます。
さらに、財産のすべてを娘婿が相続した場合には、相続人全員の遺留分を侵害する恐れもあるため、遺言書の作成にはそういった点への配慮も重要となります。

ポイント④:娘婿にクリニックの財産を売却する
クリニック財産を売却する方法では、ポイント②やポイント③と同様にクリニックの財産は娘婿に渡るものの、その分のお金は既に受け取っているため、財産自体が減ることはありません。
ただし、娘婿にクリニックの財産と等しい資力があることが条件となります。
また、院長側は売却価格分の相続財産が増えることや、売却価格が時価の半分に満たない場合には、時価との差額分を贈与とみなされることを留意しておく必要があります。

◆クリニック継承や閉院についてのご相談などを承っております

いかがでしたでしょうか。
本事例のように、婿養子として迎えられない場合や、婿養子として迎える場合、いずでの方法をとる場合でも、まず第一にはっきりさせておくべきは、娘婿に継いでほしいのはクリニックの経営なのか、それともクリニックの経営と財産どちらもなのかを決めておくことです。
また後継者への交代の時期については、相続発生後ではなく、院長が元気なうちにクリニックの経営方針などをしっかりと引き継ぐ時間と余裕をもち、交代に臨むまれることが理想的です。
円滑なクリニック継承を実現するためには「余裕をもった引き継ぎが重要」というのは、本事例のような身近な人物への継承に限らず、他人に引き継ぐ場合(第三者継承)も同様です。

弊社では、グループ内に税理士法人や社労士法人を有するクリニック経営に特化したコンサルティングファームである日本医業総研と連携し、クリニック継承や閉院に関するサポートを行っております。

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