開業医の必要経費って??(後編)

今回は『開業医の必要経費って??(後編)』と題しまして、人件費や設備費、出張費、接待交際費など、クリニック運営に関わる様々な費用について、事業とプライベートを一体どのように線引きしているのか、詳しく解説してまいります。

◆そもそも「必要経費」って?

「必要経費」とは、所得を得るために必要な経費のことを指します。
例えば飲食店の場合ですと、食材費・水道光熱費などが必要経費となります。
事業を行うときには、必要経費を収入から差し引き、残った金額が所得となります。
つまり何が必要経費として計上できるかを把握することで、正しく事業の所得を計算できるようになるのです。

◆開業医の必要経費

開業医の先生にとって、「いったいどこまで経費としてよいのか難しい…」と、線引きについてお悩みになられることも少なくないのではないでしょうか。
以下、開業医の経費として使用されることの多い科目について、簡単ではございますが上限額や計上の際の注意点などを踏まえて見てまいります。

①人件費
人に関わる経費を指します。この人件費の中にはスタッフの給料や賞与、社会保険料などの法定福利費も含み、クリニックの経費の中では最も大きな割合を占めるのではないでしょうか。
人件費として認められる金額に上限はありません。

②設備費
クリニックの土地や建物の賃料、水道光熱費、医療機器等のリース料、原価償却費などを指します。
こちらも人件費同様に金額に上限はありません。

③交際費
近隣のクリニックや大学病院の先生との食事代等の接待や慰安を目的とした経費を指します。
原則的に医療法人で支出する交際費は損金不算入とされていますが、事業に関する情報交換の場において使われたお金であると見なされれば経費として計上が可能です。
また、手土産やお中元、お歳暮などを送る相手がクリニックの事業に関連している人や会社であれば、それらも交際費として認められます。
個人立のクリニックの場合は金額に上限はありませんが、医療法人の場合は1年間で原則800万円までと上限金額が定められており、さらに資本金(出資金)が1億円を超える場合は、交際費の半額までが経費として認められます。
また、一人当たり5,000円以下の飲食費は、損金算入が認められます。

この交際費については、税務調査でチェックされることが多いので、領収書には人数や相手の氏名、会社名、住所、会った理由等の会食情報を細かくメモに残しておくことをお薦めします。

④会議費
ミーティングにかかる費用のことを指します。
貸会議室の使用料やお茶、コーヒー、お菓子、軽食、資料代等を経費として計上することが可能です。
また、会議室ではなくカフェやレストランで行う会議であっても、事業に関係する内容であれば経費として認められますが、夜に営業するスナックやバーなどは対象とはなりません。
こちらも上限はありませんが、アルコールが提供されるレストランの場合も会議費としては認められない可能性があるので注意が必要です。

⑤出張費
主に、学会参加の為に必要なホテル代や交通費のことを指します。
学会に家族が同伴する場合は、医師以外の家族の分は経費には該当しませんので注意が必要です。
また、学会の日程のついでに観光する場合には、学会に伴う支出とプライベートの支出とをしっかりと分けておくことが大切です。
出張費に要件は定められていませんが、通常の旅行に比べて高額になった場合には、確認が入る可能性もありますので、なぜ高額になったのかを証明できる書類を整えておくと安心です。

⑥福利厚生費
歓送迎会の会費など、スタッフに対する福利厚生に関する費用のことを指します。
歓送迎会以外にも、スタッフの健康診断を行った際の減免額や、衛生、教育訓練の為の費用なども該当します。
上限はありませんが、社会通念上、妥当な金額で行うのがよいでしょう。

⑦その他
その他、スーツ代や車・ガソリン代についても、経費で認められる場合があります。
例えば、スーツは一般的にはプライベートで購入するものと考えられがちですが、学会への出席や講演の為に購入した場合は、事業に関する費用として計上できます。
また、車を購入した際、その車を事業とプライベートの両方で使うといったことはよくあることでしょう。
このような場合は、「家事関連費」として、支出額を事業費用とプライベートの支出に分けることで、事業費用の部分に関しては経費とすることができます。
車は原価償却を行うので、耐用年数に応じて必要経費に計上します。
事業分を7割、プライベート分を3割と決め、按分を行い減価償却費とすることも可能です。
ガソリン代も同じように事業で使用した分は経費として計上ができますが、車両費としてではなく、旅費交通費や消耗品費として計上することも多いようです。

そして、見落としがちなのが、開業前のセミナー参加費や交通費、情報収集など、開業前の様々な費用も後から経費計上できるという点です。

◆クリニック開業についてのご相談を承っております

いかがでしたでしょうか。
医師として専門的な知識をもっていても、経費や税金等については「開業するまでよく知らなかった…。」という方も多いのが実情です。
開業医としてクリニックの運営を上手くやりくりするためには、どのようなものが経費として認められるのかを正しく理解しておくことが重要です。

弊社では、グループ内に税理士法人や社労士法人を有するクリニック経営に特化したコンサルティングファームである日本医業総研と協業し、先生方の開業をサポートしております。

これまでに、600件以上のクリニックの開業・経営をサポートした実績から、クリニックの経営を軌道に乗せ、成功に導くノウハウがございます。

開業に関するご相談や承継案件の紹介依頼など、クリニック開業にご関心がございましたら、是非お気軽にお問合せください。