跡継ぎ不在でも医業継続を可能にする第三の選択肢って?<後編>

超高齢社会を迎え人口減少が続く日本では、後継者がおらず閉院を余儀なくされている開業医の方が増えてきております。
クリニックが閉院してしまうと「スタッフの雇用や地域医療が維持できなくなる」、「各種手続きや費用の面で院長自身にも大変な負担がかかる」など、地域医療への影響や院長先生ご自身にとっても大きな負担が伴います。

今回の「跡継ぎ不在でも医業継続を可能にする第三の選択肢って?<後編>」では、『第三者継承』のメリットや注意点などについて詳しく解説してまいります。

開業医が第三者継承を行うメリット

「第三者への医院継承」は、クリニックを閉院する場合には得られないメリットがいくつもあり、開業医の先生が引退をお考えになられる際には、是非ご検討いただきたい手段です。
以下、第三者継承のメリットを大きく2つのポイントに分けて解説します。

ポイント①:閉院のコストがかからず、譲渡金も受け取れる
前回の記事でお話ししたように、クリニックの閉院・廃業には、まとまったコストがかかります。
しかし、第三者に医院継承することで、建物や医療機器などもまとめて引き継ぐことが可能となります。
院内のクリーニングや医療機器のメンテナンス等にかかる費用の一部を譲渡側が負担する場合もありますが、すべて処分するよりも大幅にコストを削減できるでしょう。
また、第三者への医院継承は売買によって行われるので、譲渡対価を受け取ることができます。
譲渡対価は、土地建物や医療機器など譲渡の対象になる資産の時価評価額に、営業権(のれん代)を加えて算出されることが一般的です。
仲介手数料や売買する不動産の名義変更、法人の役員変更・定款変更等の登記に関わる費用は発生しますが、無償譲渡でもない限り赤字に転ずることは考えにくいと言えます。

ポイント②:スタッフの雇用や地域医療を維持できる
クリニックの継承は、その地域の患者様を守ることにもつながります。
院長・経営者が代わることで多少の“患者離れ”が生じる可能性はありますが、クリニック自体がなくなれば、すべての患者様が“かかりつけ医”を失うことになってしまいます。
特に高齢者やお体が不自由な方にとっては、相当なダメージがあることでしょう。
患者様のご負担の軽減や地域医療の維持という観点から見ても、第三者継承のメリットは大きいのです。
さらに、継承時の取り決めによっては、スタッフの雇用を継続してもらうことも可能です。
原則として、個人経営のクリニックから個人医師への第三者継承で引き継ぐのは事業に属する有形資産(建物や医療機器など)のみで、雇用の引き継ぎはマストではありません。
しかし実際のところ、地域医療の維持と円滑な引き継ぎ・運営のために、スタッフが承継後のクリニックと新たに雇用契約を結ぶケースは多いようです。

第三者継承における注意点

前述の通り、第三者への医院継承には多くのメリットがありますが、継承に際しては注意しておきたいポイントもあります。

まずは金銭面です。
譲渡対価の交渉はもちろん、土地建物の原状回復にかかる費用や医療機器のメンテナンス費用を、売り手と買い手のどちらがどれだけ負担するのかなど、細かな責任分担もしっかり摺り合わせておかなければ、後々のトラブルに発展するリスクがあります。
その他にも、承継後のクリニックでもスタッフの雇用を継続しもらえるのか、患者様のカルテは引き継ぐのかなど、事前に確認すべきことが多々あります。
さらに、医院理念や診療方針・経営方針に関しては、まるごと継承しなければならないわけではないものの、“患者離れ”を防ぎ地域医療を維持していくためには、踏襲すべきものはそのまま残す丁寧な引き継ぎが必要不可欠だと言えるでしょう。

引退に際するお悩みがございましたらお気軽にご相談ください

いかがでしたでしょうか。
クリニックの第三者継承は閉院に比べてメリットが多く、跡継ぎのいない開業医の方にとっては心強い選択肢となり得るのではないでしょうか。
しかし、一方ではクリニックを継承するにあたり検討すべきことも非常に多く、後継者候補の方との交渉や各種手続きにかかる負担や労力も考えなくてはなりません。
そのため、クリニックの第三者継承は、専門家のサポートを受けながら進めることが一般的となっています。
クリニックの継承は、これから開業する医師にとっても「初期費用を抑えられる」「開院直後からある程度の収益が見込める」など多くのメリットがあり、最近では新規開業と並行して検討される方が大変増えています。
円滑なマッチングと交渉・手続きの負担軽減、双方が納得のいく契約を実現するためにも、第三者継承を行う際には、是非一度専門家にご相談いただくことをお薦め致します。

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