クリニック継承時の選択肢って?(前編)
昨今、少子高齢化が進み「後継者問題」は社会問題にまで発展しています。
特に「家業」としてビジネスを営んできた中小企業などは、後継者不在のために廃業を余儀なくされるケースが多く、医療業界も例外ではありません。
それとともに、クリニックを第三者に引き継ぐことができる「第三者継承」の認知度が高まりつつあります。
今回の『クリニック継承時の選択肢って?(前編)』では、クリニックを継承する際の選択肢の一つである「親族内継承」にフォーカスして詳しく解説してまいります。
クリニック継承の昨今の背景や動向
冒頭でも述べた通り、最近ではクリニックが廃院にならぬよう第三者に医業を引き継ぐケースも珍しくありません。
また、医師・看護師の人材不足も深刻化しており、多くの人材を持つ大規模な医療法人の傘下に入ることで人材不足を解消し、引き続き医療提供ができる体制を整えるという目的で継承を進めるケースもあるようです。
さらには、医療制度の見直しやコロナ禍による来院数の減少などで経営が苦しくなり、資金力のある医療法人へ継承することで経営の安定化を図るといった意味をもつ事業継承も少なくありません。
クリニック継承時の選択肢って?
まずは、クリニックを継承する場合の一般的な2つの選択肢について見てまいります。
まずは、クリニックを継承する場合の一般的な2つの選択肢について見てまいります。1.親族内継承
院長のご子息・ご息女、親戚などが医師の場合、親族内での継承が可能です。
ひと昔前までは、この「親族内継承」が主流でしたが、昨今においては、後継者不在であったり、子が医師であっても勤務医を続け実家を継ぐ意思はないといったケースも増えてきているようです。
2.第三者継承(親族外継承)
親族内に後継者が不在の場合や、親族内に医師がいたとしても継ぐ意思がない場合は、クリニックを第三者に譲渡することも可能です。
これが所謂、「親族外継承(第三者継承)」と言われる方法です。
現在クリニックに勤務されている副院長などを含めた周辺医師、後輩・知人医師はもちろん、医師会経由や仲介業者等に依頼して、まったく別の所から後継者候補を探すこともできます。
具体的な継承の流れは?
以下、「親族内継承」を行う場合の流れについて簡単にご紹介します。
①打診・継承時期の決定
まずは親族内に医師の方がおられる場合は、その方に跡を継ぐ意思があるのかどうかの確認を行って下さい。
継承の意思が確認できたら、具体的な継承時期について話し合いましょう。
後継者の方は、現在勤務医の場合が殆どかと思います。
退職準備や手続きのスケジュールを逆算し、早い段階からしっかりと準備を進めていくことが円滑な引き継ぎには重要となります。
②仲介会業者などへ相談
クリニック継承は、例え親族内であったとしても、手続きや必要書類の準備などには専門知識が必要となります。
個人の力だけでは、院長ご自身にも後継者となられる親族の方にも大きな負担がかかってしまいます。
また、手続きの不備や認識の相違などにより、継承後のトラブルに発展してしまうケースもしばしば見受けられます。
継承について親族内での話し合いが終わったら、継承を専門とする仲介業者に相談されることをお薦めします。
③クリニックの財産・経営状況の把握
仲介会社に依頼をすると、まずはアドバイザリー契約(※)の締結を行います。
契約締結後、まずはクリニックが保有する財産の確認と経営状況の把握を行っていきます。
後継者となるご親族はクリニックの現状を正しく把握し、万が一、なにかしらの対処が必要な場合にはコンサルタントのアドバイスを受けながら改善策を講じる必要があります。
※外部の専門家や事業者から特定の業務において専門的な知識や経験に基づく助言や提言、手続きにおけるサポートを受けるために締結する業務委託契約
④経営方針や診療内容の決定
現院長と後継者となるご親族の専門が異なる場合もあるでしょう。
継承後の経営方針や診療内容についてじっくり話し合い、無理のない「継承計画」を練ることが大切です。
ここで重要となるのは、地域のニーズにマッチした診療内容を考慮することです。
ですので、長年「かかりつけ医」として地域医療を支えてこられた院長先生の知見がきっと役に立つことだと思います。
⑤継承計画の策定
コンサルタントなどの助言を受けながら、本格的な継承計画を策定していきます。
継承に向けたスケジュール、引き継ぎ内容、継承後のクリニックの開院日などについて具体的に決めていきます。
また、このスケジュールに乗っ取って、現院長は廃止届を、新院長となる後継者の方は開設届を提出するなどの行政手続も行いましょう。
⑥院長から後継者への引き継ぎ開始
⑤で策定した継承計画に従って、院長から後継者の方に引き継ぎを行います。
このタイミングで、クリニックに勤務する看護師やスタッフ、通院されている患者様に院長交代について丁寧に説明を行うことが重要です。
引き継ぎを疎かにしてしまうと、院長交代後に看護師やスタッフの一斉退職や患者様が離散してしまうなど、思わぬ事態に陥りかねません。
そして親族内継承で一番難しいポイントがこの引き継ぎにあります。
特に、ご子息やご息女を後継者とする「親子間継承」の場合では、子を思う親心からつい口出しが多くなってしまうようです。
しかし、主導権がいつまでも現院長のままでは、スタッフも混乱し、患者様からも「やっぱり院長先生に診てもらいたい」という声が出てきてしまうかもしれません。
後継者となられるご子息・ご息女も勤務医として立派に活躍しておられる医師なのですから、ここは口出ししたい気持ちをグッと堪え、クリニックの主導権はすっぱりと後継者の方に譲り、親としてではなく、一人の先輩医師として寛容に見守る気持ちを持ち、サポート役に徹することが円満な引き継ぎを実現するための秘訣なのではないでしょうか。
クリニックの継承や閉院等に関するご相談を承っております
いかがでしたでしょうか。
親族内継承を行う場合も、第三者継承(親族外継承)の場合と同様に様々な手続きが発生します。
また、例え親族であってもトラブルはつきものです。
継承後のトラブルを未然に防ぎ、万が一トラブルが起きた場合でも解決しやすくしておくためには、プロの仲介業者による事業譲渡契約書の作成などを行っておくことが重要となります。
弊社では、引退(親族間継承、第三者継承、閉院準備など)に関する無料の個別相談を承っております。
引退に際しての気掛かり事やお悩みがございましたら、是非お気軽にお問い合わせください。