クリニック継承の選択肢(後編)
前回の記事でも述べた通り、開業医の高齢化や後継者不足などを理由に、廃院にならぬよう第三者に医業を引き継ぐケースは増加しています。クリニック継承の選択肢(後編)」では、親族内継承以外の選択肢である第三者継承(親族外継承)の具体的な流れについて解説してまいります。
また、昨今では医師・看護師の人材不足も深刻化しており、多くの人材を持つ大規模な医療法人の傘下に入ることで人材不足を解消し、引き続き医療提供ができる体制を整えるという目的で継承を進めるケースも珍しくないようです。 さらには、医療制度の見直しやコロナ禍による来院数の減少などで経営が苦しくなり、資金力のある医療法人への継承で経営の安定化を図るといった意味をもつ事業継承も少なくありません。 「◆第三者継承(親族外継承)の具体的な流れ
前回は、クリニック継承の選択肢の一つとしてこれまで主流とされていた「親族内継承」の流れについて解説致しました。
今回は、「第三者継承(親族外継承)」を行う場合の流れについて簡単にご紹介します。 ①後継者探しを始める クリニックの第三者への譲渡を考える場合には、まず後継者探しから始めなくてはなりません。 知人や後輩医師に後継者候補の先生がいる、医師会などから紹介を受ける、仲介業者に依頼して後継者を探す等、その方法は様々です。 しかし、いずれの場合でも、個人で後継者の方との継承を進めることは大変難しく、大変な労力もかかります。 ですので、この時点からクリニック継承を専門としている仲介業者等にサポートを依頼し、助言を受けながら進めていくことをお薦めします。 また、クリニック継承を専門とする仲介業者は色々と存在しますが、アドバイザリー契約には専任契約と非専任契約があります。 より多くの後継者候補の方を見つけるためには、非専任契約の仲介業者を選び、何社か同時に依頼をすることも可能です。 ②秘密保持契約(NDA)の締結 クリニック継承などのM&A(事業継承)において、情報漏洩への対策は欠かせません。 万が一情報流出があれば、クリニックのスタッフや患者様に噂が広まってしまい、離職や離散に繋がってしまうケースも想定されます。 ですので、実際の手続きを始める前には必ず仲介業者との間に秘密保持契約(NDA)を締結する必要があるのです。 ③必要書類の提出 仲介業者との秘密保持契約(NDA)締結とともに、継承に必要な書類を作成・提出します。 必要書類とは、仲介会社へのアドバイザリー契約書や経営状況・診療状況などを記したクリニックの概要書などのことです。 ④クリニックの価値を評価 クリニックの経営状況や収益、事業規模、土地・建物、医療設備など様々な項目を評価し、譲渡価格を算出します。 この譲渡価格の算出は、“クリニックに患者が集まる”見えない力をお金に換算した『営業権』の算出が大変重要となります。 この目に見えない部分まで細かく評価する必要があることから、個人での判断は大変難しく、専門家による評価・算出を行うのが一般的となっています。 ⑤匿名(ノンネーム)で後継者を探す ①~④までが無事終われば、いよいよ後継者探しがスタートします。 一般的には、エリアや診療科目、売上・利益、希望譲渡額、募集条件などをまとめたノンネームシートと呼ばれる資料を使用し「匿名」で後継者を募集します。 仲介業者のサポート・紹介を受けながら、希望に合う後継者候補の方を絞り込んでいきますが、状況によってはマッチングまでに時間を要することもあります。 後継者の方とのマッチングの可能性を狭めない為にも、早めの段階で後継者探しを始め、ゆとりをもったスケジュールで動くことも重要です。 ⑥候補者との面談・基本合意契約 後継者候補の方が決まったら、面談を実施します。 クリニックの経営方針や医療内容を共有し、双方の理解を深めるための時間です。 それらの話し合いを行い、院長と後継者候補の方が継承に合意できた場合、「基本合意契約」を結びます。 この「基本合意契約」で使用する基本合意書には、当事者情報・継承のスケジュール・譲渡価格・支払い方法などの具体的な取引内容が記載されています。 ⑦デューデリジェンスの実施 デューデリジェンスとは、適正評価手続きとも言われ、投資対象のリスクリターンを適正に把握するために事前に行う一連の調査を意味します。 クリニック継承においては、財務状況や負債、リスクなど様々な項目を専門家が調査します。 このデューデリジェンスは、事業継承後に譲渡側が抱える簿外債務や偶発債務が発覚するなどのリスクをなくし、双方が安心してクリニック継承を実現するための重要な調査なのです。 ⑧最終合意 基本合意契約の内容とデューデリジェンスの結果をもとに、譲渡条件の細かい調整を行います。 そして、最終条件がまとまったら、当事者間で最終契約書を締結し、最終合意に至ります。 この最終契約書を取り交わすと、その時点で法的拘束力が発生します。 これら①~⑧までの流れをご紹介しましたが、実際にはそれらの手続きを行いながら、スタッフや患者様への説明、後継者への業務引き継ぎなどを協力して行っていくことになります。 また、許認可の引き継ぎや行政の手続きは、自治体などの状況により時間がかかる場合もありますので、継承のスケジュールを逆算して計画的に行わなくてはなりません。◆クリニックの閉院・譲渡に関するご相談を承っております
いかがでしたでしょうか。
クリニックの継承は、親族内で行う場合も第三者(親族外)に行う場合も、同様に様々な手続きが発生し、継承完了までには約1年の期間を要します。 また、時間や労力がかかるだけでなく、手続きも煩雑です。 さらに、継承後のトラブルが起きないよう、事前の対策も重要です。 そういった理由から、クリニック継承は親族内・親族外いずれの場合であっても、 プロの仲介業者に依頼をし、サポートを受けなが慎重に進めていくことをお薦め致します。 弊社では、引退(親族間継承、第三者継承、閉院準備など)に関する無料の個別相談を承っております。 何か引退に際しての気掛かりごとがございましたら、是非お気軽にお問い合わせください。
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平日:9:00〜18:00 相談無料
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