◆クリニック継承トラブル事例◆ 父の医療法人を継承しようとしたら、絶縁状態の弟が登場!?

閉院にまつわる様々な課題を解決できるクリニックの第三者継承ですが、コンサルタントを介さずに医師同士が個人間で直接交渉を進める場合や、一般企業のM&Aを本業行っている仲介会社などに依頼をして継承を進めた場合、「まさかのトラブルに発展してしまった…。」という噂をしばしば耳にします。今回は「◆クリニック継承トラブル事例◆父の医療法人を継承しようとしたら、絶縁状態の弟が登場!?」と題しまして、医療法人のクリニックを親族内継承する場合の失敗談を物語形式で一つご紹介させていただきます。

◆A医療法人(クリニック)の失敗談

<登場人物>父タケシ:Aクリニック院長。80歳を目前に医師生活からの引退を決意。長男にクリニックを継承しようと考えている。長男ケンイチ:現在は大学病院に勤務する医師兼A医療法人の理事でもある。そろそろ実家のクリニックを継ごうと戻ってきた。次男ケンジ:医師。数年前に投資に失敗して家族とは絶縁状態。トラブルを起こすまではA医療法人の理事だったが、退社。<あらすじ>20××年正月。長男であるケンイチの家族と団欒のひと時を過ごしていた父タケシだったが、そこに数年前に仮想通貨でトラブルを起こして絶縁状態になっていた次男のケンジが登場。彼の登場により、不穏な雰囲気に…。長男「ケンジ!何しに戻ってきたんだ?」院長「お前…。よくのこのこと顔を出せたもんだ。一体なんの用なんだ」次男「父さんも兄さんも冷たいな~。実は、俺の医療法人の出資持分の件だけど、それを返して欲しいんだ。」長男「何を言ってるんだ!お前に渡す金なんてびた一文ない!」次男「兄さん、俺には貰う資格があるだろ?定款にも『社員資格を喪失した者は、その出資額に応じて払い戻しを請求することができる』とあるじゃないか。」長男・院長「…」さて、次男が主張する「出資持分の払い戻し」とは、一体どのようなものなのでしょうか?

◆医療法人の出資持分に関するトラブル

今回のケースのように、医療法人の出資持分にかかわるトラブルの中でも「出資持分の払戻請求」に関する相談は珍しくありません。平成19年3月31日以前に設立された医療法人の定款には、上記の事例にもあるように『社員資格を喪失した者は、その出資額に応じて払い戻しを請求することができる』と記載しているものも少なくないでしょう。この記載は、医療法人において出資持分を持っている者が、社員資格を失った場合(除名・死亡・退社等)、医療法人に対して出資持分の払い戻しを請求できるということを意味します。医療法人の設立には理事が3名以上必要なことから、今回のように院長とそのご子息・ご息女などの家族が理事として均等に出資することはよくあることです。そして、例えば設立当初の出資額が500万円であっても、20年後に純資産総額が20倍の1億円になっている場合もあり、持分も払戻請求時点の1億円を請求される可能性があります。このような問題は医療法人にとっては非常に深刻な問題となります。例え、現在の純資産総額が設立当初の20倍になっていたとしても、実際にその通りの現預金があるとは限りません。純資産額とは、建物や医療機器などの固定資産を含めての総額ですので、請求されても払えないという事態になってしまいます。このように、出資持分の問題は大変複雑で大きなトラブルの火種になりかねません。これらの問題を未然に防ぐためにも、理事長、後継者及び家族が日ごろからしっかりと話し合い、家族間であったとしても、出資持分の関する事項などを含め、重要な取り決めについては、仲介会社や顧問弁護士のもと、口頭ではなく書面でしっかりとかわしておくことも重要です。

◆クリニック継承(親族内・外継承)や閉院に関するご相談を承ります

いかがでしたでしょうか。クリニックの継承においては、第三者継承に比べ、親子間継承の方がスムーズにいくというイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、実際にはどちらの場合も何らかのトラブルに発展してしまうケースが多く見受けられます。ですので、クリニックを継承する際には、最初の話し合いの段階から、継承を専門とするプロのコンサルタントなどを間に置き、慎重に進められることをお薦めしております。弊社では、クリニック譲渡・第三者継承をサポートしており、クリニックの譲渡や第三者継承を選択肢として考えることで、前に述べたような手間や費用を軽減できる可能性があります。また、既に閉院を決めている場合のサポートも承ります。引退に際して、何かお悩みがございましたら、まずはお気軽にお問い合わせください。