クリニックの親族内継承って?(医療法人編)
「クリニックを継承するにあたり、親族内で引き継ぐのであれば、第三者継承に比べてスムーズにできるだろう」とお考えの先生も少なくないのではないでしょうか。クリニックの親族内継承って?(医療法人編)』と題しまして、医療法人を親族内継承する場合に必要な手続きや注意しておきたいポイントについて詳しく解説致します。
実際のところ、親族内継承・第三者継承を問わず、基本的な継承の流れに大きな違いはありません。 むしろ親族内継承だからこそ必要となる手続きや注意点もございます。 今回は、『◆親族内継承をスムーズに行うために重要なこと
医療法人を継承する際は、一般的に出資持分の評価や認定医療法人制度の活用等に目が行きがちですが、本記事ではそれ以前の根本的な部分について、親族内に後継者となる医師がいる場合、いない場合それぞれについて説明してまいります。≪親族内後継者に医師が一人のケース≫ 親族内、特にご子息やご息女の中で医師が一人の場合、クリニック関係の財産や経営権をすべて一人の後継者に渡すことができれば継承は円滑に進むでしょう。 しかし、非医師の子が複数いるケースでは、医師と非医師の子の間で争族に発展してしまうケースもしばしば見受けられます。 そういった争族トラブルも想定し、事前に対策を行うことが重要となります。 対策としては、先代経営者の生前に後継者に持分を移しておく、又は持分なし医療法人への移行等をお薦め致します。 また、不動産を先代経営者が個人で所有しているケースでは、クリニックで今後も安定して不動産を使用できるようにしておくことが重要です。 そのためには、不動産を医療法人の直接所有としておく、又は不動産信託のスキームや不動産を他法人に移す等でクリニック経営とは別で不動産を管理する方法も選択肢としてございます。 そして、家賃収入という形で、後継者以外の親族も受け取ることができるスキームをつくることで相続人同士の公平感を得られれば、例え医療法人そのものは後継者となる一人が独占的に継承することになっても争族には発展せず、円滑な継承を実現できるのではないでしょうか。≪親族内後継者に医師が複数のケース≫ 親族内後継者に医師が複数おり、それぞれの後継者が医療法人に関与するケースでは先代経営者が亡くなった後、兄弟姉妹の間で揉めるケースは非常に多いようです。 そういった親族内での争いを防ぐためには、長男は既存のクリニックを引き継ぎ、次男は分院を新設するといった手段も一つです。 また、持分ありの医療法人の出資持分に関しても、親族内で均等に分割すると、何らかの理由で誰かが退社した場合に持分払い戻し請求をされてしまい、医療法人から多額の現金が失われてしまうといった事例もございます。 出資持分は換金性のある財産権であり、出資者が多いというのは、利益が上がるほどに法人経営上のリスクが増えることでもあるということです。
このような後々のトラブルを回避するためには、あらかじめ持分なし医療法人に移行しておくか、又は出資持分は一人だけに継承するなどの対策が有効です。 そのため、医療法人の持分や不動産の所有権、古くからの不動産で未登記などがあるケースなどは、先代経営者が元気なうちに確認・準備・対応を行うことをお薦め致します。 ②親族内に後継者となる医師がいない場合 医療法では、医療法人の理事長に非医師が就任すること自体を否定しておりません。 法人の経営状態や本人の経歴等の要件から妥当性が認められれば、医師免許を持たない後継者が認可を受け、理事長に就任することも可能です。 ただし、クリニックの管理者(院長)は、医師であることが必須となります。 ですので、現実的な問題として非医師の理事長が医師資格を持つ職員を雇用して経営していくことは、余程の経営手腕や知識が求められるのも事実です。 古くからの継承方法として、ご息女(非医師)の婿として医師を迎え、後継者とする方法などもひと昔前にはよくあったようです。 その場合、持分ありの医療法人であれば、最終的に持分をご息女にすべて渡すのか、又は婿にも持分の一部を渡すのか、持分なしの場合であれば、社員を誰にするのか等、検討すべきことは様々です。 また、親族内に後継者がいない場合の選択肢として近年注目されている「第三者継承」では、医療法人の経営そのものは第三者に譲渡し、親族で所有している不動産を賃貸する形で継続的に収入を得るといった方法もございます。
◆クリニックの譲渡・閉院などについての個別相談を承っております
いかがでしたでしょうか。
本記事では、医療法人を継承する場合の基本的な考え方について解説してまいりましたが、実際のケースではそれぞれのご事情によって最適な引き継ぎ方や進め方は異なってまいります。 弊社では、引退(親族間継承、第三者継承、閉院準備など)に関する無料の個別相談を承っております。 何か引退に際しての気掛かりごとがございましたら、是非お気軽にお問い合わせください。