クリニックスタッフが自転車通勤中に事故! ?事前にできる対策って?

クリニックにおいては、スタッフの自転車通勤を許可しているところも多いのではないでしょうか。
しかし、最近では自転車と歩行者の接触による死亡事故や、街中での電動キックボードや電動自転車の利用者急増によるトラブルなどのニュースをよく耳にします。

今回は、「クリニックスタッフが自転車通勤中に事故!?事前にできる対策って?」と題しまして、M整形外科の事例をもとに、注意点や必要な対策などについて解説致します。

◆M整形外科の事例◆

M整形外科に受付として勤務するA子は、自転車で帰宅途中に他人の家の塀にぶつかってしまい肩や腕を強く打撲し、顔には大きな傷ができてしまいました。
A子自身の判断で日常には支障がないことから病院には行かず、自宅で湿布を貼り、休むことなく翌日も出勤しました。
事故の話を聞いたM院長は、念のためレントゲンでも撮ろうかと打診しましたが、「そんなに大げさなケガではないから大丈夫です」と、頑なに拒まれてしまい様子を見ることに…。
今回は大事に至らなかったものの、スタッフのほとんどが自転車通勤をしているため、今後のためにも何か対策を講じておいた方がよいのではないか…?と悩むM院長なのでした。

◆自転車通勤も管理が必要?

基本的には、自転車通勤もマイカー通勤者と同様の管理が必要となります。
あまり知られていないことですが、自転車は道路交通法第2条で「軽車両」として扱われます。
そのため、道路交通法を順守して運転しなければなりません。
そして、万が一事故が発生した場合には、補償面なども車と同じ扱いになります。
車と異なる点としては、車両の大きな車の場合、自分や相手の生命を脅かしかねないため自動車損害賠償保障法が適用され、所有者などには自賠責保険への加入が義務付けられています。
さらに、一般的にはそれ以上の補償を考慮し任意保険にも加入しておくケースが殆どです。
一方自転車の場合は、自動車損害賠償保障法の適用がないため、何も対策を講じていなかれば保険による補償が受けられません。
そのような背景もあり、自転車事故で加害者が「数千万円の賠償額が要求された」といったニュースも珍しくないようです。

ですので、クリニックの自転車通勤者に対しては、まずは一定の保険加入を義務付けることをルールとされることをお薦めします。

◆自転車保険って?

最近では、相手に大けがを負わせてしまうような自転車事故も増えており、民間の損害保険会社からは様々な自転車保険が販売されています。
街の自転車販売・修理店においても、公益財団法人日本交通管理技術協会によるTSマーク付帯保険が販売されており、自転車の購入時に加入する方も増えているようです。

自転車保険は、保険料も一カ月当たり数百円程度のものもあるので、スタッフにとっても加入による負担はさほど大きくないと考えられます。

◆クリニックでやるべきこと

自転車通勤をしているスタッフが自転車保険に加入したら、保険証券などの写しなど提出してもらう必要があります。
これらの自転車保険には通常一年間の有効期限があるため、入職時だけでなく、年に一度決まった時期に提出してもらうようにしましょう。

また、こうした管理のみならず運用にも注意が必要です。
マイカー通勤者だけでなく自転車通勤者に対して出勤途中や帰宅途中に命じる業務は最小限にしおきましょう。
民法第715条では、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と定めており、
例えば「通勤の途中でホームセンターでガムテープやごみ袋など、クリニックで使う備品を購入してきて欲しい」といった業務に付随して第三者との接触などの事故を起こしてしまった場合、民法上の使用者責任を問われる可能性があります。
つまり、事故発生時には本人と連帯して事業者も責任を負わなけらばならないケースもあるのです。
なお、民法第715条の続きには「ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」と定めており、自転車保険の加入状況の定期的な確認や、通勤・帰宅途中に業務を命じない事などは、賠償の免除材料となりますので、是非取り組んでいただきたいと思います。

◆自転車通勤の事故対策まとめ

1.自転車保険への加入を義務付ける
万が一、事故で相手を死亡させたり大けがなどを負わせてしまうと莫大な損害賠償責任が生じるケースもあります。
クリニックでも自転車通勤者には保険加入を義務付け、加入状況を定期的にチェックしましょう。

2.勤務途中の業務命令は最小限に
通勤時の業務中に事故を起こした場合、使用者が連帯で責任を負わなけらばならないケースもあります。
通勤途中の業務命令は極力避けましょう。

3.自転車運転のルールもしっかり伝える
警察や自治体が市民のへ啓発用にリーフレットを用意しているので、これらを活用してスタッフに安全運転を心がけてもらうように伝えましょう。

◆クリニックの運営・譲渡・閉院等に関するご相談を承ります

いかがでしたでしょうか。
新型コロナウイルスの流行を背景に自転車での移動をされる方が増え、自転車による事故は年々増加しているようです。
それに伴い、2023年の改正道路交通法の施行により、すべての自転車利用者のヘルメット着用が努力義務となったり、自転車運転に関する法律も変わりつつあります。
本事例のように、クリニック側の対策も重要ですが、何よりも大事なのは運転者本人が安全な運転ルールを守ることです。
イヤホンなどで音楽を聴きながらの運転やスマートフォンを見ながらの「ながら運転」をしないこと、車道と歩道の区別があるところは車道通行が原則であることなど、自転車運転のルールについても改めて確認しておきましょう。

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