「ネット上の口コミ」への対応って?

昨今、クリニックの広告・宣伝にインターネットやSNSを活用しておられる所がほとんどではないでしょうか。

インターネットやSNSでの集客はメリットも多い反面、様々なお悩みも耳にします。
今回は、その一つとして最近ニュースでも取り上げられている「ネット上の口コミ」への対応について解説してまいります。

インターネット上の口コミ・評価によるトラブル

今年4月にインターネット上の不当なクチコミ投稿で権利侵害”があったとして、医師らがGoogleを提訴したというニュースがありました。
Googleが提供するサービス「Google マップ」には、個人の感想を投稿する機能や、星の数で評価する機能が備わっており、これらの投稿内容が施設や場所などの評判に関わってきます。
今回のニュースでは、事実と異なる内容や理由を付けない最低評価等の投稿が繰り返されたとして、医療機関側がGoogleに削除依頼を行ったが対応してもらえないなどとして損害賠償の請求に至りました。
これらのような評判を下げるネガティブな書き込みを行うのは患者様だけとは限らず、職場に不満を持つスタッフや競合、業者なども考えられます。
しかし、口コミ内容が例え嘘だったとしても、小規模なクリニックにとっては死活問題になりかねません。
なかなか削除して貰えないとなると、一体どのような対策があるのでしょうか?

不適切な投稿への対策

まず前提として、投稿の「削除依頼」や「開示請求」は“投稿が不快である”という理由だけでは応じて貰えません。
根拠として、ネット上に投稿された内容が以下の2点の条件を満たすことが必要です。
①名誉棄損等の権利侵害に当たる
②事実無根である
クリニックの場合は、投稿により患者様が減ってしまうことで社会的評価の低価が見られれば名誉棄損を主張できる可能性もありますが、内容が事実無根であることの提示はなかなか難しいところです。

とはいえ、Googleの事例のように、なかなか削除対応して貰えない場合であっても、管理者への削除依頼は必要となります。
またGoogle以外の国内企業が運営するサイトの場合も同様に、「問い合わせ」や「違反報告」などから不当な投稿に対しては削除依頼や報告を行いましょう。

次に、削除依頼を行っても応じてもらえない場合には、弁護士に依頼して「削除仮処分」という裁判手続きを行うことも可能です。
手続きから1~2カ月程で結論が出るので、無事に主張が通り仮処分決定が出されれば削除に応じて貰える場合が多いようです。
また、少し難易度は上がりますが、匿名の投稿者を特定したい場合には「発信者情報開示請求(開示請求)」を行うという方法もあります。
そのためには、まずはコンテンツプロバイダー(運営会社)にIPアドレスの請求を行い、次にそれらの情報に基づきインターネットプロバイダー(NTTドコモ、KDDI等)に対して書き込みをした人物の開示請求を行うという手順が必要となります。
しかし、インターネットサービスプロバイダーが接続記録を保管する期間は3~6カ月程のため、これらの開示請求を希望する場合は投稿があった日から2~3ヶ月以内に行わなくてはならず、投稿を見つけたタイミングによっては間に合わないケースも考えられます。
更にこれらを弁護士に依頼して行う場合には、裁判費用も30万円程かかり、Googleのようにサイト管理者が海外企業の場合にはもっと高額な費用がかかってしまいます。

こういった工程や費用面での負担を考えると、ネット上の誹謗中傷などの不当な投稿を見つけても、まずは感情的にならずに冷静に対策について検討することが大切です。
もっとも、投稿内容が具体的で、投稿者がほぼ特定できる場合であれば、内容証明郵便を送ったり、警察に協力要請を行うといった手段もあります。
過去には、投稿者に書き込みの部分削除や全面削除を行わせることができたという例もあるようです。

不当な投稿にはポジティブな情報発信で対抗も!?

また、前述のような削除依頼や開示請求は1件1件対応していたらキリがないのも事実です。
発想を逆転して、ポジティブな情報発信で対応するという考え方もありますので一例としてご紹介致します。
✔ Googleなどの口コミに「ご指摘いただきありがとうございます。」と丁寧に返信をする(決して喧嘩しない)
✔ クリニックのHP等に「よくある質問」「患者様からのお声」といった形でネガティブな書き込みもあえて紹介し、今後どのような改善を行っていくのかを表明する
✔ ご指摘内容を現状のクリニックの課題として向き合い、予約システムの導入検討やスタッフ接遇向上への取り組みなどの改善策について前向きに検討する
✔ 事実無根と思われる内容には「事実確認」のコメントを返信し、放置しない …など

勿論、不当な投稿は許されることではありませんし、厳正な措置がとられるべきです。
しかし、ネガティブな投稿を削除することばかりに固執してしまうと、つい感情的になってしまい状況が悪化してしまいます。
「サービスの質やブランドイメージの向上につなげるチャンス」と捉え、ネガティブな投稿にも誠実に向き合っていくことで、患者様からの信頼も得られ、結果的にクリニックの成長にもつながるのではないでしょうか。

クリニックの継承・閉院等についてのご相談を承っております

いかがでしたでしょうか。
今回の記事のように、弊社でも多くのクリニックの院長先生から「ネット上の口コミ」についてのご相談をいただきます。
しかし、クレームゼロのクリニックなどむしろ少数で、盛況している程に、どこかに運営上の無理が生じてしまうものです。
そのような中でいただくネガティブな口コミについては、クリニックの課題として前向きに受け止め、早めに対応することが、むしろクリニックを更に成長させ、地域の信用につながっていくのではないでしょうか。

弊社では、グループ内に税理士法人や社労士法人を有するクリニック経営に特化したコンサルティングファームである日本医業総研と協業し、クリニックの運営や引退(閉院準備、第三者継承、親子間継承など)などに関するサポートを行っております。
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