クリニックでも定額残業代制度は導入すべき?

今回は、「クリニックでも定額残業代制度は導入すべき?」と題しまして、定額残業代制度の概要及び導入の際の注意点について詳しく解説致します。

◆スタッフの人件費に関するお悩み

クリニックの経営者である開業医の先生方にとって、運営費の多くを占めるスタッフの人件費については何かとお悩みになられることが多いのではないでしょうか。

特に秋から冬にかけての風邪やインフルエンザなどが流行する季節は、内科系を中心に患者様が多くなる分、収益面では安定しますが、一方でスタッフは毎日法定外残業が続いてしまい、その残業代も膨れ上がってしまう…ということもよくあることでしょう。

昨今、時間外労働に関する規制も厳しくなり、一般企業では営業職などの外回りの仕事が多く、正確な残業時間を会社が把握しにくいケースを考慮し「営業手当」などの名目で定額残業代制度を導入している企業が多いようです。
一般企業と同様に医療機関や介護福祉施設などでも運用を検討するケースが増えてきていますが、定額残業代制度の導入にはメリットだけでなく、デメリットもあるので注意が必要です。

◆定額残業代制度の概要

以下、定額残業代制度の概要及び注意点について見ていきましょう。

1.残業代は独立した手当として支給
基本給の中に残業代を含む運用では、支払い根拠が不明になるため、「●●手当」といった名目で定額残業代を支給し、基本給とは区別しなくてはなりません。

2.何時間相当分の残業代なのかを明確に
定額残業代の手当は、その額が何時間相当分の残業代に当たるのかを明確にしなくてはなりません。
例えば、30時間分の残業代として4万5千円を支給するなどと規定し、給与規定や雇用契約書などにこれらの事項を記載しておく必要があります。

3.残業代の設定は時間外労働の時給又はそれ以上に設定
また、残業代の設定は最低賃金法に違反しないよう、通常の時間外労働における時給又はそれ以上に設定しなくてはなりません。
定額残業代の計算は、まず基本給や諸手当を入れた基準額を所定労働時間で割って時給を算出します。
端数は100円単位又は1,000円単位で切り上げて支給するのが一般的です。

4.残業時間は45時間以内に設定
定額残業代部分に含む残業時間は45時間以内に設定した方が良いでしょう。
厚生労働省から「時間外労働の上限規則として残業時間の上限は、原則として月45時間・年間360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。」と通達が出ています。

5.定めた残業時間を超過する場合と少ない場合
定額残業代として定めた時間を超えた場合、超過時間に対しても残業代の支払いが発生します。
一方、定めた時間よりも実際の残業時間が少ない場合も、設定した通りの定額残業代を支払わなくてはなりません。
さらに補足ですが、労働基準法上、賃金は毎月支払わらなければいけないため「前月の残業時間が定額残業代分を超過したものの、当月は定額残業代分の時間に満たなければ調整して相殺する」というような運用は認められません。

◆定額残業代制度の導入はクリニックの運営状況により判断

前述の通り、クリニックでの定額残業代制度の導入は必ずしもメリットになるとは言い切れません。
まずは制度に頼ることなく、クリニックにおける仕事の効率化や、適正な業務量であるか、一定のスタッフに業務が集中していないか等を正しく把握し、仕事量が多すぎると判断される場合は、既存スタッフの負担軽減の為にパートタイマーの雇用などを考えることをお薦めします。

◆クリニックの運営・継承・閉院などに関するご相談を承っております

いかがでしたでしょうか。
本記事では、運営費の多くを占めるスタッフの人件費について、クリニックでの『定額残業代制度』の導入を取り上げてまいりましたが、どういった対策が最適な手段となるかは、クリニックの運営状況などにより異なります。

弊社では、グループ内に税理士法人や社労士法人を有するクリニック経営に特化したコンサルティングファームである日本医業総研と協業し、クリニックの運営や引退(閉院準備、第三者継承、親子間継承など)などに関するサポートを行っております。
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