クリニックでの有休取得をうまく進めるためのコツ!

今回は、「クリニックでの有休取得をうまく進めるためのコツ!」と題しまして、有休の取得義務化の概要や運営に支障が出ないための仕組みづくりなどについて解説してまいります。

■年次有給休暇の取得義務化って?

2019年4月から始まった働き方改革では、その柱の一つとして「年次有給休暇の取得義務化」があります。
しかし、クリニックなどの中小企業においては、そもそも運営人数が少ないこともあり、職員の有休取得が十分に進んででいないというお悩みも多く聞かれます。

まずは簡単に、年次有給休暇の取得義務化についてみていきましょう。

2019年4月以降、有休が年間10日以上付与される職員に対しては、付与日から1年以内に有休を5日間取得させることが使用者の義務となりました。
必要に応じて、使用者が取得時季を指定することも可能です。
これらは、正職員だけでなく、週3日以上働くパートタイマーの方も対象となります。
また、定年退職した後に働き続けている嘱託職員の方も、有休が10日以上付与される場合には対象です。

■有休取得の三つの方法

次に、一般的な三つの有休取得の方法についてみてまいります。

①本人の時季指定による取得
まず一つ目は、職員本人が「×月×日に有休を取得したい」と申請する本人の時季指定による取得です。

②有休の計画的付与
二つ目は、本人の申請だけではなかなか有休取得が進まない場合に、労使間の協定によって取得日を決定する方法です。
使用者側が「8月14日と15日は有休として消化してください」というように労使間の協定で定めることで、職員に対して合法的に取得を促すことが可能です。
しかし、労働条件の不利益変更という点には注意が必要です。
あらかじめ「8月14日と15日は夏季の特別休暇」としていた場合、特別休暇を有休とすることは労働条件のマイナス改定にあたります。
労働条件を使用者側が一方的にマイナス改定できないことは、労働契約法第九条、十条で定められています。

③使用者側が時季を指定
三つ目は2019年4月から新たに導入された制度で、なかなか有休取得が進まない職員に対して、「△月△日は有休を取得してリフレッシュしてください」と命じることができます。
①・②に比べると強制的な印象を与えてしまう可能性があるので、事前に職員への相談を行うのが良いでしょう。

上記3つのいずれかの方法で有休付与日から1年以内に5日間の取得を進めることになります。

■有休の管理について

クリニックの職員には中途採用の方も多く、入職日がそれぞれ異なるため有休付与日もバラバラになり、その管理も複雑です。
しかし、2019年4月からの働き方改革の法改正では、有休管理簿の作成及び3年間の保存も求められています。
まず、この有休管理簿については、都道府県労働局のページで管理台帳のフォーマットや記載例をダウンロードすることができます。

有休管理の負担をできるだけ軽くするためには、有休付与の基準日を統一するという方法があります。
大企業や公的機関においては、4月1日を基準日として管理を簡素化させているところも多く、労働基準法違反にならないよう、有休付与を前倒しする運用をとっています。

例えば、1月1日に入職した職員の有給付与日は本来であれば半年後の7月1日になりますが、これを前倒しして3カ月後の4月1日に付与します。
この方法は、入職日によって大きな差がでてしまうため、大企業や公的機関のように新卒採用者が殆どで中途採用者の割合が少ない場合には適していますが、中小企業やクリニックのように中途採用者が多い場合には、10月~3月入職の職員は4月1日付与、4月~9月入職の職員は10月1日付与というように、年2回の基準日を設けることも可能です。
より公平性を保ちたい場合には、入職日をその月の1日とみなす方法が良いかもしれません。

■運営に支障が出ないための仕組みづくり

前述の有休取得の三つの方法の中の②有休の計画的付与でも記載した通り、お盆休みや年末年始を特別休暇に定めているクリニックの場合、これらの特別休暇を有休に変更することができません。
とはいえ、他の時季に職員が一斉に有休を取得してしまうと運営が成り立たないといった課題もあります。
そこで、「誕生日休暇」や学校行事など家族の用事で休むための「家族休暇」などの制度を新たに作り、それらを有休の計画的付与あるいは時季指定として導入されているところもあるようです。
こういった方法を取ることで、取得日の集中も防ぐことができ、有休消化の促進にも繋がります。

■クリニックの開業・運営に関する個別相談を承っています

いかがでしたでしょうか。
クリニックでは、少人数体制で運営を行うケースが多く、職員の有休取得を奨励したいという考えはあるものの、他のスタッフに負担がかかってしまう、運営に支障が出れば患者さんにも迷惑がかかってしまうなど、なかなか思うようには進められないというのが実情のようです。

弊社では、グループ内に税理士法人や社労士法人を有するクリニック経営に特化したコンサルティングファームとも協力し、クリニックの開業・運営に関するサポートを行っております。
クリニックの開業に少しでもご関心がございましたら、まずはお気軽にお問い合わせください。