クリニックでのスタッフ面接・採用のチェックポイント!
超高齢社会を迎え人口減少が続く日本では「人手不足」が大きな問題となっており、これは一般企業だけでなくクリニックなどの医療業界においても同様で、看護師やスタッフの採用に難儀しているというお話をよく耳にします。
今回は、「クリニックでのスタッフ面接・採用のチェックポイント!」と題しまして、チェックシートの活用方法や注意すべき質問事項などについて詳しく解説してまいります。
履歴書による絞り込み
クリニックでのスタッフ採用は、まず履歴書等の書類による選考で候補者を絞り込み、面接を経て採用者を決定するのが一般的です。
履歴書による絞り込みでは、履歴書の内容から、応募者がどのような人物なのかを想像し、仕事への適正を判断しなくてはなりません。
履歴書から読み取れる情報だけで判断するの容易なことではありませんが、例えば、誤字・脱字があまりにも多い、殴り書きされているといった場合は、几帳面さに欠ける(雑な性格である可能性が高い)ことが読み取れます。
また、職歴欄からは、応募者が過去に医療機関での勤務経験があるのかどうかも分かります。
ここで注意すべきは、数カ月などの短期間で転職を繰り返しているケースです。
このような場合は、協調性の欠如やスキルに問題があるなど人柄に問題がある可能性が想定されます。
他には、通勤距離も候補者を絞り込む上では一つの判断材料になるでしょう。
面接時にはチェックシートを有効に活用
履歴書による書類選考の後には、面接を実施します。
この面接ではまず、クリニックのスタッフとして相応しい身だしなみやマナーが備わっているかをチェックする必要があります。
例えば、メイクが派手すぎる、爪を伸ばしている(華美なネイルもNG)、強い香水をつけているといった候補者は、その時点でクリニックに勤務しようとする意識が欠如していると捉えてよいでしょう。
また、短時間の面接の中で、より効率的に候補者から必要な情報を聞き出すためには「チェックシート(面談記入シート)」を予め準備しておくことをおすすめします。
【チェックシートの項目例】
■基本情報
・氏名
・住所
・年齢
・希望職種
・通勤時間 他
■質問内容
・当院を選んだ理由
・前職の退職理由
・希望シフト
・急な休みや早退が発生する要因はあるのか(頻度)
・希望給与額
・ご自身の長所・短所
・過去の勤務先でのご経験 他
■外見的な印象(面接中に適宜確認・3段階でチェック)
・健康面
・服装(清潔感)
・態度
・協調性
・話し方
・好感度 他
これらのチェックシートを面接中に適宜埋めていき、最後に優れていると感じた点、欠点と感じた点など概評として記載しておくと良いでしょう。
応募の状況にもよありますが、複数の候補者と面接する場合はこのチェックシートが後になって必ず役に立つと思います。
仕事に対する姿勢を確認するためには?
次に、候補者の仕事に対する姿勢を探るには、どのような質問が有効なのかみていきましょう。
例えば受付スタッフを採用する際の面接では、「患者さんはクリニックの受付に何を求めていると考えますか?」「もし受付で初診の患者さんを対応している時に院長から呼び出しがあったらどうしますか?」など、実際の現場をイメージした具体的な質問をすることで、候補者の方の考えが見えてくるのではないでしょうか。
他にも、クリニックなどの医療機関での勤務経験がある方の場合は、そこで感じたやりがいや、ストレスに感じたことなど、過去の体験談やエピソードについて話してもらうのも、人柄や考え方を知る上で有効でしょう。
このような質問を通して、院長がスタッフに求める人物像(ホスピタリティ・対応力・協調性・向上心等)に合致するかどうかを判断していきます。
また、面接時に院長から候補者の方に向けて、経営理念や方針、そのような人物を求めているのか、必要なスキル、院内で定めているルールなどについて説明しておくことも効果的です。
事前にこれらについて伝えておくことで、採用後の認識の相違によるトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
技術や能力は重視すべき?
看護師の採用とは異なり事務スタッフを採用する際には、技術や能力については特段重視する必要はないと考えます。
確かに、これまでに電子カルテやレセコンの使用経験があることは強みではありますが、これらのスキルは入職後の研修でしっかりと身につけることができます。
面接では、基本的なパソコン操作ができるのかという確認を行っておけば十分ではないでしょうか。
面接で聞いてはいけないNG質問は?
面接時には、本籍や家族構成、家族の職業、宗教、思想など、本人の適正や能力と無関係な事項について直接質問することはNGとなっています。
ただ、候補者の中には主婦層の方も多く、家庭の事情などから早退や急な休みを要するケースもあるでしょう。
採用側としては、このような事情を予め把握しておくためにも「急な早退や休み、シフト変更を要するような要因があるのか?」について確認しておく必要があります。その際には、プライベートに踏み込みすぎてしまわぬよう、質問内容には十分に配慮してください。
採用決定前の準備
最後に、採用決定前の準備についてです。
労働基準法第15条第1項により、労働契約締結の際、労働者には労働条件をきちんと明示することが定められています。
書面での提示が義務付けられている事項は下記の通りです。
・労働契約の期間、更新の基準
・就業の場所、業務内容
・始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日など
・賃金の決定・計算・支払い方法、締切日、支払い日、昇給について
・退職に関する事項
スタッフの採用前に、使用者はこれらの労働条件を明確に設定しておかなければなりません。
また、使用者が退職手当や賞与などの臨時の賃金、労働者が負担すべき食費、作業用品、災害補償・業務外の傷病扶助などについて別途定めている場合には、これらについてもきちんと示しておく必要があります。
さらに、労働安全衛生規則第43条では、正職員や勤務時間が正職員の4分の3以上のスタッフに対して、雇い入れ時の健康診断を実施するように定めています。
この雇い入れ時の健診は、入職前の3ヶ月以内にスタッフ自身が別の場所で受けた健診でも代用できます。
採用決定後は、これらの手続きがスムーズに行えるよう、抜けもれなく準備を整えておく必要があります。
クリニックの運営や継承・閉院等についてのご相談を承っております
いかがでしたでしょうか。
最後に補足ですが、クリニックにおける採用では、その性質上エリアが狭く、応募者は近隣の方の可能性が非常に高いと考えられます。
そのため応募してきた方は患者さんになり得るという側面も念頭に置いておく必要があり、不採用を通知する際にも相手の気持ちを逆なでしないよう、十分な配慮と丁寧な対応を心がけることをおすすめします。
また、内定判断の「スピード感」もクリニックの採用においては大変重要です。
応募者は同時に複数のクリニックに応募されている方も多く、優秀な人材はどこのクリニックも欲しがっているでしょう。
比較検討しているうちに他院から先に内定が出たというのはよく聞く話ですので、注意しましょう。
弊社では、グループ内に税理士法人や社労士法人を有するクリニック経営に特化したコンサルティングファームとも協力し、クリニックの運営や継承(親子間・第三者継承等)、閉院などのサポートを行っております。
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