クリニック第三者継承 成約事例インタビュー『はねだ内科』前編

創業の精神と23年間の歩みを未来へ~医業における新旧交代の理想モデル~

羽田 均 前理事長・院長

琴似発寒川の扇状地を開墾して発展した札幌市西区。生活の利便性に治安の良さも加わって、子育て世代からも人気の高い区域だ。「はねだ内科クリニック」は、2001年、札幌駅からほど近い発寒中央駅前に開設された。発寒エリアは札幌市の経済を支える地場産業を担ってきた歴史があり、現在は商業施設が集まる拠点機能を備える。前院長の羽田均先生の専門は呼吸器内科ながら、クリニックは内科領域全般に対応し、かつては小児科医療も手掛けてきた、いわばかかりつけ医の祖として地域の健康を支え、20年以上を経たいまも、多くの来院数と高収益が維持されている。クリニックを承継した工藤俊彦先生は羽田先生と同じ北海道大学医学部出身で、消化器内科を専門とし、大学病院をはじめとする基幹病院で業績を積んだのちに、開業医の道を選んだ。事業承継は両者の所望が一致した共起とはいえ、両者には大学の同窓というだけでない、傾蓋知己のごとし縁があったようだ。

結果を実感しやすい呼吸器外来の面白さ

−−−まず、前院長の羽田均先生からおうかがいします。先生は1984年に北海道大学医学部を卒業後、同第一内科で8年、関連病院の市立札幌病院でも9年間、呼吸器内科で高度な医療に取り組んでこられたのですね。

(羽田均前院長)研修後に北大の第一内科に入局し、以後肺がんの研究と治療を、市立札幌病院呼吸器内科に移ってからの病棟では化学療法を主体に行ってきたわけですが、残念ながら肺がんの完治は現在でも難しく、多くの方が亡くなられています。それもあって、外来でCOPDや喘息治療などをやっていきたいと思い、自院開業を目指すことになりました。

――呼吸器外来の面白さはどこにありますか。

治療が長期化することが少なくない病棟と違って、結果が出やすいのが呼吸器外来です。患者さんの訴えはそれぞれですから、まず丁寧に傾聴することに心掛けてきました。似たような症状に、すべて同じ治療法が当てはまるわけではありません。個別の治療アプローチを会話のなかから探り出して選択し、快方に向かえばストレートに喜ばれます。結果が出せることがクリニックの診療スタイルとして一番大事なことだと思っています。

――クリニック名自体は「内科」で、とくに呼吸器を強調しているわけではありません。これは、専門性を発揮する以前に、内科の門戸を広く開けようというお考えからですか。

開業当初から生活習慣病関連の患者さんが約半数を占めてきました。治療もそうですが、もっと広い意味で地域の方々の健康づくりを応援したいと考えました。

――それで2階に「健康サロン」を併設されたわけですね。

そうなんです。生活習慣病に密接にかかわる高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症などの指導・改善のほか、食事療法、運動療法、禁煙指導などもサロンで行っています。腎臓疾患をもつ方やダイエットをしたい肥満症の方も多いですね。管理栄養士には毎週火曜日と土曜日の週2日来てもらっていますが、土曜日の実施は平日に参加できないサラリーマンに配慮したものです。採算度外視で始めたサービスでしたが、外来栄養食事指導料が算定できるようになりましたので、ようやく事業の一端らしくなってきました。

――サロンの評判は先生の耳にも入ってきますか。

利用者によるのでしょうが、概ね良好だと思っています。とくに、管理栄養士のアドバイスは、継続的に参加されている方が多いようです。

――ホームページを拝見すると、シンプルながら内科クリニックとして掲載すべき情報がキチンと網羅され、しかも読みやすく構成されていますね。

ホームページの構築には、時間も手間もかかります。以前、私は地域密着コミュニティFM局の三角山放送局で、毎週1回1話の病気についての講座のようなものをやってきて、放送局が毎回その録音テープをくれたものですから、それを書き起こした原稿が、ホームページの「健康講座」です。これが案外見られているようで、当院の受診につながっている実感はあります。

――先生が当初に描かれた「こんなクリニックにしたい」という姿は、23年経ったいま実現できたと感じますか。

慢性疾患プラス呼吸器内科の2本柱というのは、構想段階から描いていたものです。ただ当時は地元に小児科がなくて、風邪など軽症の子どもも診てきましたし、幅広い内科に対応してきたのですが、それでも慢性疾患プラス呼吸器内科のイメージが徐々に根付きましたし、23年経ってすっかり2本柱で定着しています。

――お子さんも診て来られたのですね。

開業当初は1日の患者数が5人なんて日もありましたから、何でも診なきゃというのはありましたし、地域の方に頼まれればできる限りの対応をするのも、町医者の務めだと考えています。

<事業承継での再会>

――今回、クリニック事業を第三者に承継しようと思ったきっかけは何でしょうか。

前職、市立札幌病院の定年が65歳だったことから、体力的なことというより、65歳あたりが一つの区切りかなと思ってきました。そこでメディカルトリビューンに後継者探しを依頼したわけです。

――他の事業承継マッチング企業とは比較されなかったのですか。

他社にも声掛けをしましたが、メディカルトリビューンの渡辺昭宏さん、日本医業総研の植村智之さんの対応の速さに驚きました。メディカルトリビューン紙も長年講読していましたので、医療メディアとしての信頼度が高かったこともあると思います。

――工藤俊彦先生について、面談の印象はいかがでしたか。

工藤先生のことは元々存じ上げていたのです。同じ北大の出身ですし、診療科は違うものの、札幌市立病院で2年間一緒に汗を流してきた間柄で、私の退職時に送別会を開いていただいたことが思い出されます。

――そうだったんですか! それは心強いですね。でも工藤先生の専門は消化器内科です。専門領域の違いについてはどうでしょうか。

当院の基本は内科ですから、消化器に対する専門性はむしろプラス要因になっていくのではないですか。急に方針を変える必要もないでしょう。いまの患者さんは長く通院されている方ばかりです。少しずつ丁寧にプロセスを踏んで、消化器の患者さんを増やしていかれたらいいのではないでしょうか。

――懇意といえる間柄ですが、先輩開業医として伝えたい開業医の意識はありますか。

クリニックが提供する内科医療の基本は、生活習慣病と感染症です。そうした一般的な内科ニーズを満たすことが第一。そのうえで、工藤先生の理想をプラスして新しいクリニックの姿を作っていただきたいと期待しています。

――羽田先生はまだ66歳です。現在非常勤で工藤新院長をサポートされているわけですが、これで医師を引退わけではありませんよね。

当院での週1日の勤務は続けていきます。「先生、辞めてしまうのですか!?」と言ってくださる患者さんや、残ってくれたスタッフを大事にしたいと思っています。工藤先生の診療スタイルや人柄も、皆さん徐々に馴染んできたようです。工藤先生にはこの体制を維持しつつ、クリニックの新たな医業ベースを構築していただきたい。そこまでは見届けたいと思っています。

(文責 日本医業総研 広報室)

◆Clinic Data

医療法人社団 はねだ内科クリニック

診療科:内科

所在地:〒065-0012 北海道札幌市西区発寒6条2-10

クリニックホームページ:https://haneda.or.jp/

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