親子間でのクリニック継承が難航するワケ

代々医師の家系、などとよくいわれるように、現在でも医学部学生の3割~半数が医師を親にもつとされています。
クリニックの事業継承では、経営者は「医師」に限定されることから、医師免許をもつご子息・ご息女が継承者の第一候補と考えるのが一般的でしょう。

ところが、親子間で事業継承がなされているのは25%程度でしかないとする調査結果があります。つまり、親族ではない第三者による継承が多くを占めているのが実際です。

なぜ親子間の継承が難航するのか? 今回は事例を交えつつその理由に迫ります。

「父さんの医院を継ぐ気はありません」倅に相続を断られ

<ご相談者のプロフィール>

  • ご年齢:75歳
  • 開業年数:20年以上
  • エリア:関東北部
  • 標榜科目:内科・泌尿器科
  • 年間売上:4,000万以上
  • 相談の経緯:年齢的・体力的なご事情によりクリニックの譲渡・閉院を検討

事例の院長は基幹病院での勤務を経て同地域で開業し、以来20年余にわたり受付事務の奥様とともに地域医療の最前線を担ってきましたが、75歳を間近にし、友人の開業医たちの引退の話がチラホラと聞かれるようになりました。

院長の息子は、同県内都市部の中核病院で内科医長として勤務しています。診療科のエキスパートとしてだけでなく、若手医師のよき指導者としても活躍している様子がうかがえます。

これまで親子間でクリニックの跡継ぎの話はしたことがありませんでしたが、息子が医師になったのも開業医の父親を見ての影響だろうと、院長は親子間の事業継承を半ば当然のことのように考えていました。
そこで、連休を使って実家に帰ってきた息子に改めて継承の相談を持ち掛けたところ、即座に「クリニックを継ぐ気はない」とにべもなく断られてしまったのです。

断られた理由は「専門領域」「生活スタイル」「子どもの進学」

息子さん自身が医師になることに父親が少なからず影響していることは間違いありませんが、それでも両親が毎日忙しなく患者に接し、診療終了後も夜遅くまでカルテの整理や事務作業に追われる生活を見て、開業医になりたいという気持ちにはなれなかったようです。

もちろん、病院勤務も多忙であることには変わりありませんが、診療だけに集中でき、オン-オフのメリハリが付けられる生活スタイルが息子さんには合っているようです。

また、父親と同じ内科系ながら専門領域が異なることで、内視鏡を自在に扱う自身の強みが発揮できないことにも抵抗があったといいます。

さらに息子さんの長男が中学受験を控えていました。
将来の医学部受験を意識して都市部の私立中学を目指してきただけに、クリニック継承に伴う家族の引っ越しには、息子さんの嫁の同意も得られそうにありませんでした。

開業医の半数以上が後継者不在

弊社と提携しているコンサルティング会社、日本医業総研の調査によれば、クリニック開業医の50%以上が身内に後継者がおらず、実際に継承が成立する割合は4分の1程度という実態があります。

これには本事例のような、「診療科(専門領域)の違い」「仕事と私生活のバランス」「子どもの進学などの家族の都合」といった要因のほか、子どもに医師になること強く勧めない、医師であっても無理に継がせたくない、といった傾向も影響しているのかもしれません。

医師の働き方への意識も大きく変化しようとしています。親が開業医だから、というのは、本人の開業志向の動機づけには必ずしもならないということがいえそうです。

長年支えてくれたスタッフや患者さんのことを考え、第三者への継承を検討

本事例でお会いした院長からは、何よりも常に地域のことを最優先に考えられている印象を受けました。
また、長年クリニックの顔として受付事務と診療補助に携わっていただいた職員の継続雇用にも、強いこだわりがありました。「クリニックを一代限りで終わらせてはならない」―、それは、20年余にわたり地域医療を支えてきた院長が全うすべき責務のようにも感じられました。

その結果、院長は子息への引継ぎを断念し、第三者継承へと考えを切り替えられました。
弊社では院長の諸事情と意思、継承の条件等を確認し、約1半の期間をかけて近隣県の開業希望の先生に打診し、継承完了までサポートさせていただきました。

医師の働き方への意識も大きく変化しようとしています。親が開業医だから、というのは、本人の開業志向の動機づけには必ずしもならないということがいえそうです。

親子間だからこそ多い意見の相違

親子間継承では、親と子の間で診療スタンスや、治療方針、働き方への考え方等の違いにより継承がうまくいかないケースが目立ちます。
実際に、引継ぎ後に親子間で診療方針をめぐるトラブルが生じ、息子さんがクリニックを放り出してしまった……、という話をうかがったことがあります。身近な関係なだけに、双方が自身の考えから一歩も譲らず、結局は地域や患者さんが迷惑を被ることになるわけです。

第三者継承の場合、M&Aとしての売買契約を介在しますから、ある意味ビジネスライクに話ができるのに対し、対価の発生しない親子間では、感情的になりやすい傾向があると考えられます。

医療に対する最新の知見をもって病院で勤務されてきた子どもにとって、父親の診療スタイルに古さ・物足りなさを感じるのは致し方ないのかもしれません。
それでも、まずは双方が認め合う、少なくとも子どもは父親の地域での功績・実績を素直にリスペクトする姿勢が大切です。親子間だからこそ、患者さんの引継ぎと同時に、診療コンセプト、診療内容、運営方針等の慎重な検討が必要となります。

開業場所を選べないことも開業側の大きなネックに

自院を経営するということは、先生の生活の大部分がクリニックの立地によって左右されてしまうということです。
新規開業で立地選定に相当な時間を費やすのは、診療圏のマーケット規模と先生の生活基盤を両立させる必要があるからです。

ところが、事業承継の場合は患者さんと施設を引き継ぐ意味での、「立地(物件)ありき」ですから、継承者がその条件に生活スタイルをアジャストできるかどうかが意思決定上の大きな要素となります。

クリニックの将来の親子間継承を考えるのであれば、早期に子どもの意思を確認し、継承に備えることが重要になります。

■クリニックの継承のお悩みは専門家へのご相談を

メディカルトリビューンでは、これまで地域医療に貢献してきた先生方のクリニックを、次の世代へ引き継ぎ地域医療を存続・発展させてためのご支援をさせていただいております。

本事例にあるような、親子間継承につきましても、過去にサポートをさせていただいた実績もございます。
ご相談や、譲渡額の査定は一切無料で承っておりますので、譲渡に関する具体的なご相談はもちろん、将来の選択肢の一つとして自院の資産価値を知りたい等でも構いませんので、お気軽にお問合せください。