土地建物付きでクリニックを譲渡するには?

郊外で戸建て開業されている先生から後継者探しのご相談をいただいた際に多く寄せられるご意向として、「テナント賃貸ではなく、土地建物も一緒に譲渡したい」というご希望をいただくことがあります。

今回は事業にあわせて不動産も一緒に譲渡したい場合に、気を付けておきたい点を詳しく見ていきましょう。

不動産付きのクリニック譲渡の難易度が高くなる理由

一般的に不動産(土地・建物)を含めたクリニックの譲渡は後継者探しの難易度が高くなる傾向にあります。

その理由は、買い手となる開業志望の先生から見ると明確で、①最終的な譲渡額が高くなりやすい②資金繰りが難しくなるという点が大きいです。

土地は耐用年数のない(使用による損傷・劣化のない)固定資産ですから購入費は経費化できません。一方、建物は構造・用途によって減価償却期間(年数)が異なりますので、売買時の簿価が基本になります。

つまり、純粋な事業用資金以外に、経費性のない不動産購入費を調達しなければならなくなり、資金繰りを圧迫することになります。

さらに、立地によっては毎年発生する不動産の固定資産税負担も決して軽くはありません。 経営が軌道に乗り、安定的な利益を出してからの資産形成として不動産を購入する考えもありますが、買い手にとって継承後の立ち上がりの不安定な時期には荷が重いといわざるをえないことを念頭におくべきです。

不動産付きで譲渡したい場合は工夫が必要

不動産も一緒に譲渡する場合に気を付けておきたい点は、

1)適切な不動産評価額を設定する

2)買い手となる先生に配慮した柔軟な譲渡条件を設定する

の2点となります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

①適切な不動産評価額を設定する

ご相談いただく先生によっては、土地建物の譲渡額を決める際に、「購入時の金額」を言及される場合もございます。

売る側の心情として、取得時にかかった金額から下げたくない、損をしたくないと考えるのは当然のことですが、「買う側」の立場から考えるとどうでしょうか。

仮に開業して30年経っているとすれば、土地の価格も周辺の開発状況によって30年で大きく上下しますし、建物の価値に関してはほとんど資産価値がなくなってしまっていることが多いです。

特に土地の売買については公示されている情報から市場価格も調べられますので、客観的な情報を元に決定しないと、後継者候補を探すのが難しくなります。

弊社では、固定資産税の評価額から逆算して実勢価格試算をしたり、近隣の不動産取引事例などを参考にして土地の譲渡額について助言させていただいております。

譲渡額の評価が難しい場合は、不動産鑑定士に鑑定を依頼し中立性の保たれた評価額を設定する場合もあります。

②買い手となる先生に配慮した柔軟な譲渡条件を設定する

冒頭に少し触れた通り、買い手の先生にとっては、長期的には購入にメリットがあったとしても、開業時にはテナントの方が判断のハードルが低くなります。月々に支払う家賃は借り入れの返済ではなく、経費になりますのでなおさらです。

土地建物の所有権は移さず、新たに「賃貸契約」として譲渡することも可能ですが、これにはメリット・デメリットがあり、長期的な安定収入が期待できる反面、所有者としてのメンテナンス責任等が生じるということでもあります。

一方、不動産も一緒に譲渡してしまってすっきりしたい、という売り手側の先生のお気持ちもわかります。

この場合は、「一定期間だけ賃貸にする」という方法が解決策の一つとなります。

つまり、経営が軌道に乗り、収入が安定するまではテナントとして貸出し、購入資金が貯まったタイミングで購入してもらうという方法です。 これを譲渡契約のオプションに入れることで、双方が納得しやすい継承とすることができるでしょう。

譲渡額の査定や閉院・継承のお悩みは専門家へのご相談を

弊社と提携し、クリニック継承をサポートさせていただく日本医業総研はグループ内に税理士法人や社労士法人を有するクリニック経営に特化したコンサルティングファームです。

また、これまでに550件以上のクリニックをサポートした経験から、クリニック継承において利益相反関係となる売り手と買い手の間に立ち、双方の希望を叶えるためのノウハウを有しています。

譲渡額の算定や、出張相談、資料請求など無料で承っておりますので、お気軽にお問合せください。