開業医の年収のピークはいつ?

年数の経過に伴って年収も増えていくとお考えになる先生も多いのですが、実際にはそうではなく、一般的に10年目を境にゆるやかに減少していくと言われています。
このような推移となる背景には、クリニックを経営していく上での課題が潜んでいます。今回は、開業医の年収、およびクリニック経営における課題の関連性についてご紹介いたします。

◆開業医の平均的な年収、実際のところは?

まずはじめに、データから開業医の年収を見てみると、標準的な開業医の年収は、平均で約2,800万円という調査結果があります。
参考までに同調査の勤務医年収をみると、約1,500万円弱となっており、勤務医と比較して約2倍近くの年収を得ているとになります。

また、所得税や住民税、社会保険料を控除した手取りベースで比較では、開業医は約1700万円、勤務医は約1000万円となり、約1.7倍の収入を得ていることがわかります。

※平成30年の第22回医療実態調査より
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000571267.pdf

◆なぜ開業医の年収は10年目以降に下がりやすいのか

前述のように勤務医に比して収入を多く得ている開業医ですが、年収推移が上昇曲線を描く勤務医とは違い、一般的には開業10年目を境に減少に転じると言われています。
その理由は大きく以下の3つあると考えられます。

①周辺に競合が増え、患者が分散する
②医療費抑制政策が進んでいる
③院長自身の体力、モチベーションの低下

一つ一つ詳しく見ていきましょう。

【1】周辺に競合が増え、患者が分散する

年収が減少に転じてしまう大きな要因の一つとしてあげられるのが、クリニックの診療圏内への競合の進出です。

開業当初はほとんどライバルがいなくとも、10年前後経過すると、競合の数も増加し、患者数・収入に影響が表れてきます。

【2】医療費抑制政策が進んでいる

もう一つ大きな外的要因として見過ごせないのが、診療報酬や医療費負担の改定に代表される、医療費抑制政策による患者数減少です。

2021年6月に可決された75歳以上の医療費の負担割合の引き上げなど、国の方針として公的負担を抑制する方向に動いています。

これらの政策はクリニックの収入においてボリュームゾーンとなる高齢者の足が遠のくことにつながり、財務状況を悪化させます。

患者数の減少による収益悪化の影響は、院長自身の給与を減らして対応することも多く、年収減の一因となっていると推察できます。

【3】院長自身の体力、モチベーションの低下

院長先生自身のモチベーションや体力の低下といった内的要因も、年収減の一因に挙げられます。
開業当初は働けば働くほど、患者数や売上がついてくることもあり、モチベーション高く働けていたのが、患者の固定化に伴って伸びが頭打ちになるにつれ、維持が難しくなってきます。

また、開業して10年も経つと、繰り上げ返済などで開業資金等の借入金を返済し終え、一つの区切りを迎えることも影響するでしょう。

開業医として歩み始める年齢は平均40歳前後であり、10年後には50歳を超えます。
以後は生理的な現象として体力低下は避けられず、診療時間の短縮や、休診日を増やしたりすることを検討することになります。

こういった様々な要因の影響が、10年目以降の年収に徐々に表れてくると推察されます。

◆開業後10年目は出口戦略を考え出す契機

いかがでしたでしょうか?

開業されている先生のご事情は様々ですが、一つだけ言えることは、開業収入が低下に転じやすい開業10年目は、出口戦略を考え出す契機となるということです。

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