クリニックの事業計画書はどうやって書く? – 資金計画編 –

前回は、経営理念や診療内容、開業立地、主な患者層、経営戦略、人員計画などクリニックの根幹にかかわる構想部分「経営基本計画」についてご紹介いたしました。

今回はお金にまつわる「資金計画」についてご紹介いたします。

■資金計画の立て方

クリニックの開業における資金計画は「どこにどれだけのお金が必要か?」「そのお金をどのように調達するか?」といったお金の用途と導入を明確化する目的で作成します。

この計画書では、確かな根拠に基づく数値を明記することが重要となりますが、多くの先生は、多忙な病院勤務期間中に経営を学ぶ機会がありません。病院の試算表や決算報告書を見て黒字経営がなされているかどうかは分かっても、経緯や内訳、資金の流れを読み解くのは難しいでしょう。

そういう先生方が自力で完璧な計画書を作成するのは困難ですから、まずは予想がつけやすい項目を書き出し、そこから少しづつ深堀りして具体化していくことが大切です。

例えば、

  • 不動産(購入費/テナント入居費)
  • 内装工事費
  • 医療機器
  • パソコンなどの管理機器
  • 広告宣伝費
  • 備品や消耗品
  • 開業後の運転資金

など、開業にあたってイメージしやすい費用を大項目として箇条書きにし、税理士や開業コンサルタントなどの専門家の意見を聞きつつ補足していきましょう。

※一般的なテナント開業の内科クリニックの資金計画の一例

上記のようにテナント物件で開業する場合は、保証金、仲介手数料、前家賃なども詳細に記載します。
内装費は平均値(坪単価)を基に暫定的に計画を立てますが、実際は建物の引き渡し状態や既存設備(電気容量や給排水設備等)によって大きく変動することがありますので、ここでも設計会社など専門家のアドバイスが必要です。

また医療機器ですが、設備をどの程度まで揃えるべきか?は先生の開業ビジョンと投資額とのバランスを見るべきでしょう。
先生の多くは、医療機器に病院同等のスペックを求められますが、それが本当に必要かどうか、実際に導入するだけの稼働率が見込まれるのか?その可否を整理しリストアップします。
高い専門性を発揮することはクリニックの強みである一方で、プライマリケアの提供という医療機能上、オーバースペックな機器の導入は経営の足かせとなる恐れがあります。
高額な投資となりますので、それぞれの金額は専門家の意見を聞きながら市場の相場を的確に把握するようにしてください。
導入にあたっても、現金購入(割賦)かリースを利用するか、多面的・長期的な視野から検討することになります。

その他、医師会の入会金や、広告宣伝費、各種備品・消耗品等も積み上げれば意外と大きな金額になってきますので、漏れなく計算・記載が必要です。

開業にあたって必要な資金は、一般的な内科系クリニックで運転資金も含めるとおよそ6,000~8,000万円程度になります。
自己資金は多いに越したことはありませんが、一般的には10%前後を準備されることが多く、不足分を金融機関からの借入金で賄うことになります。

■資金計画を練る際の注意ポイント

そして大切なのは、開業後の運転資金の検討です。

開業初月から、家賃や人件費、水道光熱費、通信費、リース料などの固定経費が発生しますが、保険診療における支払基金からの入金は診療月(レセプト請求は翌月10日締)の翌々月20日前後になりますので、最長で約2カ月のタイムラグが生じることになります。
また、開業初月から黒字経営達成というのはまれで、一般的には右肩上がりの売上を続け、開業から12カ月以内の黒字化を目指して事業計画を立てることになりますから、そこまでのキャッシュフロー上の赤字分(収入-支出)を補填する資金が必要となります。これが運転資金です。
クリニック経営の資金ショートは経営を脅かすだけでなく、院長の経営者としての資質が問われ、金融機関等からの信用を著しく棄損するだけに、余裕をもった資金計画がとて重要になるわけです。

クリニック開業後の立ち上げ期は損益ギャップが生じる期間があることを念頭に置き、ある程度余裕をもった運転資金を用意する必要があります。

■事業計画書の作成は専門家へご相談ください

いかがでしたでしょうか。
事業計画書の作成は大変なことではありますが、金融機関に融資の相談や開業後の経営方針に影響しますので、クリニック開業と運営を成功させるための羅針盤だとよくいわれます。
一人で事業計画書作成を進められる医師もいらっしゃいますが、収支計画や資金繰りといった金銭面のつめが甘くなりがちで、そのままでは金融機関の担当者に納得してもらえないことがほとんどです。より説得力のある計画書を作成するには、専門家からサポートを受けたほうが良いでしょう。

弊社と提携し、クリニックの開業・経営をサポートさせていただく日本医業総研はグループ内に税理士法人や社労士法人を有するクリニック経営に特化したコンサルティングファームです。

また、これまでに600件近くのクリニックの開業・経営をサポートした実績から、クリニックの経営を軌道に乗せ、成功に導くノウハウを有しています。

開業に関するご相談や承継案件の紹介依頼など、お気軽にお問合せください。