クリニックの売却価格、基本的な考え方とは
クリニック事業継承のカウンターパートは、開業を目指す勤務医、分院展開を図る医療法人、医療分野に進出する公益法人などが基本になりますが、
そこで、クリニックの譲渡額をどのように決めればいいのか?という点が大きなテーマの一つとなります
プレディールにおける譲渡価格の決め方、評価の基準は法律によって決められているものではなく、M&A専門家の間でも意見が異なります。
時節、非常に高い価格設定で募集を掛けている案件も見かけますが、それはクリニック継承特有の事情を考慮せず、通常事業会社のM&Aの際に用いるべき評価方法で設定をしてしまっている可能性があります。
今回は、クリニック継承における評価方法の基本についてご紹介していきます。
■譲渡額を決める際の基本的な考え方
まず、クリニックの譲渡額を決める際の基本的な考え方についてご紹介していきます。
わたしたちが日常的に買い物をする際には、ある種の相場感が働きます。
しかし、事業の譲渡価格に、定価のようなものはありませんし、比較対象もありません。
売る側はもちろん、買う側においても、確たる根拠をもっていないことが大半です。
つまり、クリニックの譲渡額だけを見てもそれが適切な価格なのかどうかはわからない、ということを念頭に置き、公平性が確保されたしっかりとした算定根拠をもつことが重要になります。
例えば、前述した「非常に高い価格設定で募集を掛けている案件」では、
年売法※(または年買法とも)と呼ばれる評価方法が使われていることがあります。
※年買法(年倍法)とは、「時価純資産+営業利益×1~5年」などの計算式を用いて譲渡価格を算定する方式。計算が簡易であり、感覚的に納得もしやすいため、中小規模のM&Aに使われることが多いが、年数の基準を恣意的にコントロールできてしまうなど、問題も。
また、新規開業と違い、承継開業のメリットは、患者を引き継げる点にありますから、譲渡後もしばらく前院長が残ったほうが、患者が定着する可能性が高まります。
例えば、純資産0円、利益2,000万円の場合、上記の式に当てはめると、「純資産0円+利益 2,000万円×1~5年」で、譲渡価格は2,000万円~1億円となりますが、何年分の利益を反映させるのか?によって、譲渡価格にかなりの差が生じてしまいます。
ここでポイントとなるのが、譲渡額が高くなるほど、支払う手数料も高くなるということです。
■クリニック譲渡における手数料はどう決まる?
一般的な企業M&Aにおいては、算定費用、着手金、月額報酬、成功報酬といった費用項目が発生しますが、
クリニック継承においては、成功報酬のみとする仲介事業者も少なくないようです。
また、成功報酬における手数料は、譲渡成立額に一定割合を掛けて算出されることが一般的です。
仲介業者としては、高い譲渡額で成立させるほど自身への手数料が大きくなりますから、相場観と離れた高い譲渡価格を提示してくる業者には要注意です。
一見すると、クリニックを譲渡したい院長にとっては、譲渡額が高ければその分手元に残る資金も多くなるため問題ないように思えます。
しかし、この価格にはクリニックを引き継ぐ側の目線が考慮されていない点に注意しなければなりません。
高額な譲渡価額が承継後の経営の重荷になってしまっては、
本体目的である患者さん本位の地域医療を絶やさず継承する目的が本末転倒となってしまう可能性があります。
クリニック継承はあくまで売り手買い手双方の合意があって初めて成り立つものですから、募集を開始したはいいものの、いつまでたっても問い合わせが入ってこないということになりかねません。
■ご勇退・継承の準備は専門家へのご相談を
弊社と提携し、クリニック継承をサポートさせていただく日本医業総研はグループ内に税理士法人や社労士法人を有するクリニック経営に特化したコンサルティングファームです。
また、これまでに約600件のクリニックをサポートした経験から、クリニック継承において利益相反関係となる売り手と買い手の間に立ち、双方の希望を叶えるためのノウハウを有しています。
譲渡額の算定や、出張相談、資料請求など無料で承っておりますので、お気軽にお問合せください。