医院継承におけるクリニック特有の事情とは

 

勤務医が独立し開業医になる、医療法人が分院展開する、こういった際に既存のクリニックを承継するケースが徐々に増えてきておりますが、
クリニックの譲渡額はどのように決めればいいのか?という点は大きなテーマの一つです。
譲渡価格の決め方、評価の仕方は法律によって定められていない為、様々な考え方があり、専門家の間でも意見が異なります。

今回は、クリニック継承における評価方法について、詳しくご紹介していきます。

■クリニック特有の事情とは?

一般企業のM&AとクリニックのM&A(医院継承)とは似ているようで様々な点で異なり、中でも特に以下の2点は、医院継承を考える際には考慮すべきポイントとなります。

①承継する側(買い手側)の優位性

医師が開業医として独立を考える場合、新規開業と承継開業の2つの選択肢があります。最近になって承継開業が注目されてきましたが、あくまでも新規開業と並行して承継開業も選択肢として考えているという先生が一般的で、承継開業だけに絞ってこだわる方は少数派です。

診療科や事業規模によって必要な開業資金は異なってくるものの、一般的な内科でのテナント開業の場合、6千万円前後の資金が確保できればクリニックを開業できます。額面金額の多寡だけで判断することはできませんが、黒字事業を引き継ぐことで、初期投資を早期にかつ確実に回収できるという承継開業にメリットを感じなければ新規開業を選択することになります。

②承継する側の候補が限定される

一般企業のM&Aの場合は、例えば自社のポートフォリオ拡充やシナジーを目的とした異業種間でのM&A成立は珍しくありませんが、医療機関の場合、譲受できるのは医師か医療法人に限られますし、そもそも投資利回りを期待するディールではありません。

また、売り手側にはいつまでに見つからなければ閉院というタイムリミットを定めているケースがあり、
①で示した買い手側の優位性を考慮すれば、適正金額を上回る譲渡価格を設定してしまうと、後継者探索がうまく進まないことは容易に想像できるのではないでしょうか?

クリニックの特有の事情を考慮せず、例えば前回ご紹介した年買法(年倍法)を用いて算定してしまうと、大きく外してしまった譲渡価格で募集することとなり、いつまでたっても後継者が現れない、ということになりかねません。

■更新に係る投資コストも考慮される

また、承継開業のメリットとして新規開業より開業資金を抑えられるという点を挙げましたが、医院承継の場合、医療機器や内装設備等は中古であり、その中には法定耐用年数を超えるものもあります。

つまり、医院承継時点での価格を抑えられたとしても、近い将来更新投資が必要になる可能性があればクリニックの譲渡価格を算定するうえでは、更新投資に係る資金も勘案すべきと言えます。

承継後、更新投資の必要性が出てきた際、トータルのコストとして考えたら新規開業の方が良かったというケースもありうるということです。

買い手側の立場で考えれば、独立開業するというのは医師人生において一世一代のイベントであり、大きな投資が必要となります。
その為、承継開業においてもコストメリットを精査・検証することは当然であり、こうした事情を考慮して譲渡額を決める必要があるといえるでしょう。

次回は、買い手・売り手双方が納得する譲渡額の決め方についてご紹介します。

■ご勇退・継承の準備は専門家へのご相談を

弊社と提携し、クリニック継承をサポートさせていただく日本医業総研はグループ内に税理士法人や社労士法人を有するクリニック経営に特化したコンサルティングファームです。

また、これまでに約600件のクリニックをサポートした経験から、クリニック継承において利益相反関係となる売り手と買い手の間に立ち、双方の希望を叶えるためのノウハウを有しています。

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