クリニックを継承した時の患者様への対応って!?

前回は、クリニック継承に伴う「職員への対応」について解説しました。
今回は、これまで長年クリニックに通ってくださった大切な“患者様”に焦点を当て、どのような対応を行う必要があるのか、詳しく解説してまいります。

◆第三者継承をすると患者様はどうなるの?

譲渡側にとっては、大切な患者様を後継者の先生に引き継ぐことができ、譲受側の先生にとっては、ゼロから集患する必要のないことから、患者様に関する側面では大きなメリットが双方にある「第三者継承」。
この「第三者継承」では、院長の交代によって2割程度の患者様が背離してしまうと言われています。
その理由は「前院長だったからこそ通っていた。」という患者様が一定数いらっしゃることが一因と考えられます。
しかし、2割程度の患者様が乖離するというデータは、あくまでも後継者の先生にしっかりと引き継ぎを行った場合の数字です。
万が一、引き継ぎをしっかりと行わなかった場合は、さらに多くの患者様が継承後に乖離してしまうことが想定されます。
患者様が乖離してしまわれることは、譲渡側の先生にとっても、長年診てきた大切な患者様が、自身の引退をきっかけに「かかりつけ医」を失ってしまうという思わしくない結末となってしまいます。

◆具体的には何をするの?

そのようなことがなるべく起こらないよう、譲渡側・譲受側の双方が一緒に診察する「引き継ぎ期間」を設けるなどして、「新しい先生に代わっても、かかりつけ医として安心して任せられる」というポジティブなイメージを患者様に植え付けるようにしていきましょう。
譲渡側の先生は、カルテに記載されていない患者様の生活背景なども十分理解したうえで、個別の診療方針を打ち立てることがあります。
これこそが、長年にわたって培ってきた信頼関係の礎であり、後継医師に引き継ぐべきかかりつけ医の姿でもあります。

◆患者様のカルテは引き継げるの?

また、クリニックで保管する患者様のカルテには、患者様の氏名、年齢、住所などの個人情報に加え、病歴や薬歴といった個人情報も含まれますので、当然ながら個人情報に該当し、
個人情報保護法の適用を受けることとなります。
譲渡側の院長が高齢化に伴う体力の衰えや、持病などを抱えているなかで、クリニックに蓄積された数千人~数万人に上る患者様一人ひとりに対して、カルテ引継ぎの事前承諾を得ることは現実的なことではありません。

では、患者様の事前同意を得ることなく、第三者である譲受側の先生にカルテを引き継ぐことは個人情報保護法に抵触するのでしょうか?
まず、結論から言うと、クリニックの第三者継承における前院長から後継者の先生へのカルテ情報の引継ぎは、個人情報保護法に定める「合併その他の事由による事業の承継」の観点から、同法違反に抵触することはありません。
もちろん、カルテ情報を引き継いだ医師が、診療等の医療行為の目的を超えて個人情報を使う場合は個人情報保護法に抵触することになります。

前述のとおり、クリニック継承においては、カルテは患者様の同意がなくても引き継ぐことが可能です。
しかし、カルテに記載されている情報は患者様の大切な個人情報であることには変わりありません。
実務的にはクリニック継承が決定した段階で、院内の掲示物や患者様に後継者の先生を紹介するのと合わせて、カルテの引き継ぎを行う旨を患者様に伝えておくと、患者様にも安心してもらえるのではないでしょうか。

◆地域への対応って?

さらに、余談ではありますが、地域住民の方々に対して法律的に実施しておかなくてはならないことは特段ありませんが、クリニックの公共性や地域連携といった観点から考えると、譲渡側・譲受側の双方で地域の連携医療機関や地区医師会、自治会などに伺い、クリニック継承の事実を伝え、譲受される先生を紹介しておくことも円滑な事業継承には重要となります。

◆引退についてお考えの先生は是非お問い合わせください。

いかがでしたでしょうか。
長年通っておられる大事な患者様を引き継ぐことができる第三者継承ですが、円滑な継承を実現するためには「院長自らが事前に後継者の先生を患者様に紹介する」「後継者の先生には患者様のカルテ情報だけではなく生活背景など細やかな情報も共有しておく」など、患者様が今後も安心して通院できる環境を整えておくことが大切です。

弊社では、
「身内に跡継ぎがおらず、患者様のことを考えると辞めるにやめられない…」
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