◆事例紹介◆クリニックの閉院(廃業)事例
今回は、Aクリニック(医療法人)の閉院(廃業)事例を基に、はたして閉院(廃業)以外の選択肢がなかったのか?その判断の分かれ道について解説いたします。
◆Aクリニック(医療法人)の閉院(廃業)事例
静岡県にある内科系の無床クリニックであるAクリニックは院長(理事長)の高齢かつ実質的な後継者不在により已む無く廃業なさいました。
こちらのクリニックには、閉院(廃業)以外の選択肢はなかったのでしょうか?
順を追って見ていきましょう。
〔Aクリニック(医療法人)〕
*理事長:80代
*引退理由:ご自身の体調不良により診療できない日が増えた
*家族:勤務医の長男・開業医の次男の二人のご子息がいる
Aクリニック(医療法人)の院長は80代後半で、数年前から持病で体調を崩される日が多くなりました。
満足のいく診療ができなくなっていると感じ、引退を考え始めたようです…。
院長には、50代勤務医の長男と40代開業医の次男がいますが承継する気はない様子。
院長も息子たちに後を継ぐ気がないのであれば「すっきりと医療法人を清算結了したい!」と考えました。
医療法人には現状、金融機関からの借り入れもなく(他の負債もなし)、クリニックの不動産は院長(理事長)の個人所有です。
しかし、引退後の主たる財源は終身保険のみなので「当面の生活資金の確保」が必要となります。
引退後の備えとして院長が行った対策は下記の通りです。
<対策>
・医療法人を解散清算手続き
・院長(理事長)に退職金として保険証券(終身保険)を現物で支給
(法人名義を個人名義に変更)
・院長(理事長)個人が当該保険証券を担保に当面の個人資金を借入れ
・院長(理事長)は公正証書遺言を作成
さて、「廃業」の一択だったAクリニック(医療法人)ですが、他に選択の余地はなかったのでしょうか?
例えば、昨今の後継者不足や院長の高齢化などの背景から注目されている「第三者継承」。
ご子息やご息女など親族間での継承が難しいとわかった段階でこの「第三者継承」について検討するのも一つの選択肢です。
クリニックのスタッフや患者様を後継者に引き継げる(=地域医療の存続)、ご自身の引退後の資金として譲渡額が受け取れる、さらには閉院コストがかからないなど、費用面でも大きなメリットがあります。
今回の事例のように、ご自身の体調面での不安がある場合は、診療が難しくなりクリニックの売り上げが著しく減少してしまう前に「第三者継承」も視野に入れ、親族内継承や閉院と並行しながら引退の準備を進めることをオススメします。
◆ハッピーリタイアメントを迎えるために
いかがでしたでしょうか。
多くの院長先生が、開業してから日々努力を重ね、その身を削って地域医療に貢献してこられたことと思います。
しかしながら、昔は当たり前だった親子間継承も、価値観の多様化に伴い、子が継がないといったケースが増えてまいりました。
「そろそろ年齢的にも引退を考え始めたが、子が後を継いでくれるかわからない…」
「最近自身の体調に不安があり、満足のいく診療ができていない…」
こうしたお悩み事や気がかり事がございましたら、ぜひ一度弊社の継承診断や個別相談をご活用いただければ幸いです。