クリニック継承で受け取れる譲渡対価の相場って?
今回は、「クリニック継承で受け取れる譲渡対価の相場って?」と題しまして、個人経営のクリニックを第三者の個人医師に継承した場合の譲渡対価の相場について解説してまいります。
■閉院する前に検討したい「継承」という選択肢
少子高齢化が進み「後継者問題」は社会問題にまで発展しています。
特に「家業」としてビジネスを営んできた中小企業などは、後継者不在のために廃業を余儀なくされるケースが多く、医療業界も例外ではありません。
近年は個人で経営されているクリニックの閉院が後を絶たず、場所によっては地域医療の維持が難しくなってしまうといった深刻な問題となっています。
医療機関が複数ある地域であっても、患者様にとって「かかりつけ医」を失うことは生活の上で重大な問題です。
そういった意味でも、第三者へのクリニック継承は、地域医療存続のための希望の光と言えるのです。
そうは言っても、クリニックの診療を続けながら後継者を探すことは簡単ではありませんし、「閉院することになっても仕方がない」「無理をしてまで誰かに継承しようとは思わない」と、お考えになられる先生もいらっしゃるでしょう。
しかし、閉院や廃業も同様に開業医にとっては大きな負担となります。
クリニックの第三者継承の場合、物件や医療機器をそのまま後継者に引き継ぐことができ、閉院や廃業よりも実際は手間が少なく、さらには営業権として譲渡対価を得ることも可能です。
■クリニック継承における譲渡対価の相場
では、継承元が営業権として得られる譲渡対価は一体どのくらいなのか、その相場についてみていきます。
例えば、家や店舗を売却する際、物件そのものの評価や立地などの条件等によって売り値が変わることは、広く知られていることかと思います。
これは第三者継承という形でクリニックを売却する際も同様です。
しかしクリニック継承においては、数千万単位という規模の譲渡対価が発生するケースも珍しくはありません。
一般的にクリニックの譲渡価格は、継承前のクリニックの財政状況および収益力を鑑み、より適正な譲渡価格を決める為に「譲渡対象資産(土地建物や医療機器)の時価評価額」と、1年分の営業利益を基準とした「営業権」から算出されます。
建物が賃貸やリースでなければ譲渡対象資産だけでも十分にまとまった金額になりますが、さらに盛況(利益の多い)のクリニックであれば、営業権に高値がつき、譲渡対価が高額になるのです。
■譲渡対象資産額と営業権(のれん代)の算出方法
ここで、譲渡対象資産額と営業権の算出方法について詳しく見ていきます。
*譲渡対象資産額の算出方法
譲渡対象資産とは、土地建物や医療機器など、継承によって後継者に引き継ぐ資産のことです。
一般的な事業継承では、有価証券や負債も引き継がれるため、総資産から負債分を引いた「純資産」で計算しますが、個人経営のクリニック継承においては負債等を引き継ぐことは原則的にありません。
譲渡対象資産額は、土地建物や医療機器の時価で計算します。
つまり、保有しているクリニックの物件的価値が高く評価されるほど高額になり、医療機器などの設備も高額で状態が良いものほど査定額が上がります。
一方、賃貸やテナント物件で開業している場合や医療機器をリースしている場合は、保有資産ではないため当然ながら譲渡対象資産額が生じません。
譲渡対象となる資産がなければ、譲渡対価はこの後に説明する営業権のみで算出することになります。
*営業権の算出方法
営業権の算出方法は、第三者継承を仲介する会社によっても異なりますが、弊社では、個人経営のクリニックを個人医師に譲渡する場合は、1年分の実質利益(院長の所得だけでなく、貯蓄性の高い保険料や専従者給与なども含む)を基準に算出しています。
しかし、営業権を算出するには、これまでの実績や今後見込まれる成長率なども加味する必要があり、必ずしも1年分の利益=営業権となるわけではありません。
例えば、開業後の年数が浅い(10年未満)のクリニックの場合、「拡大期にある」と判断されることもあり、継承後の伸びしろから見込まれる売上予測を元に算出した年間所得を営業権とし、1年分の利益よりも高く評価されることもあるのです。
但し、開業から5年以内で継承する際には、譲渡所得の実質税額が上がるため注意が必要です。
譲渡所得は所有期間によって「短期譲渡所得(所有期間が5年以下)」と「長期譲渡所得(所有期間が5年超)」とに分けられます。
営業権の場合、短期譲渡所得では全額が総合課税の対象になる一方、長期譲渡所得の課税対象は2分の1のみとなります。
また、分離課税である土地・建物の譲渡所得も、長期は15%・短期は30%と差があるので、所有物件の場合はそれらの税制についても念頭に置いておく必要があります。
■クリニックの譲渡や継承に関するご相談を承っております
いかがでしたでしょうか。
ご引退をお考えになられる際、後継者となる子や親族がおられない場合でも、閉院せずに第三者へ継承するという道があります。
前述の通り、第三者継承では、閉院にかかる費用や負担を軽減できるだけでなく、後継者から譲渡対価を受け取ることもできます。
また、地域の方々も「かかりつけ医」を失わずに済みます。
さらに、契約内容によってはスタッフの雇用継続まで叶うのです。
弊社では、閉院や継承に関するご相談を承っております。
譲渡対価診断や閉院費用などのシミュレーションができるサービスもございますので、是非ご活用ください。
先生方の大切なクリニックの今後について、一緒に考え、少しでもお役に立てる場面があれば幸いです。