第三者継承で得られる譲渡対価以外のメリットって?
昨今、開業医の高齢化や後継者不足の問題がクローズアップされる中、子や親族ではない「第三者」にクリニックを継承する事例が増えております。
第三者へのクリニック継承の多くは、売買によって行われており、継承元は後継者となられる方から譲渡対価を受け取ることができます。
今回は、「クリニックの第三者継承で得られる譲渡対価以外のメリットって?」と題しまして、クリニックの第三者継承によって削減できるコストや継承元が負担する費用などについて解説します。
■クリニック継承で浮かせることができるコスト
クリニック継承で得られるコスト面のメリットは、前回の記事で詳しく解説した譲渡対価だけではありません。
>クリニック継承で受け取れる譲渡対価の相場についてはこちらの記事をご参照ください。
クリニックを継承すれば、閉院・廃業にかかるコストの一部または大部分を削減することができます。
一般的にクリニックを閉院する際にかかる費用は、約1,000万円程度(約と程度が重複表現です)と言われています。
主なコストは以下のようなものが挙げられます。
・廃止や医療法人の解散に伴う法的な手続き等にかかる費用
・建物や内装の取り壊し費用(賃貸物件の場合は原状回復費用)
・什器・備品や薬品など医療廃棄物の処分費用
・医療機器の処分費用
・従業員の退職金
・残債務がある場合は弁済費用
また、閉院に関わる手続き等を院長がすべて一人で処理することは難しく、法的な手続き等は税理士や社会保険労務士に、医療廃棄物や医療機器の処分は専門業者等に依頼することが多いため、各方面で手数料も発生します。
一方、クリニック継承では、建物はもちろん医療機器や什器・備品等をまとめて後継者に引き継ぐことが可能です。
院内の原状回復費用や医療機器のメンテナンス費用を継承元が負担したとしても、閉院する場合と比べれば大幅にコストを抑えることができ、譲渡対価から十分にまかなえる金額でしょう。
■クリニック継承で継承元が負担する費用
次に、クリニック継承で継承元が負担する費用についてです。
①譲渡所得への課税
クリニック継承によって得た譲渡対価は「譲渡所得」として扱われ課税対象となります。
日本の税法においては、土地・建物を譲渡したときは分離課税、土地・建物及び株式等以外の資産を譲渡したときは総合課税で計算されます。
つまり、土地・建物分の譲渡所得は分離課税で、営業権(のれん代)や医療機器の譲渡所得は総合課税で徴収されるということです。
譲渡所得はいずれも所有期間によって「短期譲渡所得(所有期間が5年以下)」と「長期譲渡所得(所有期間が5年超)」とに分けられ、短期譲渡所得の方が長期譲渡所得よりも実質税率が高くなるため、アーリーリタイアのケースでは注意が必要です。
②仲介会社への手数料
クリニック継承に伴う候補者探しや各種手続きには、多大な労力・負担がかかります。
そのため、クリニックの第三者継承は、マッチングも含めて専門家を介して行われるケースがほとんどです。
専門家には、仲介手数料(コンサルティング費用)を支払うことになります。
仲介手数料(コンサルティング費用)は「レーマン方式」というM&Aの報酬料金体系に基づき、譲渡価格が2億円までの場合は5%相当分を支払うのが一般的な規定なのですが、その算出方法も仲介会社によって異なるため事前に確認しておく必要があります。
>仲介手数料の算出方法についてはこちらの記事をご参照ください。
また、サービスも様々ですので、できるだけ手厚いサポートを受けられる業者を選ばれることをお薦めします。
③不動産関連の登記に関わる費用
クリニックの建物や土地が所有資産である場合には、売却した際に不動産の所有権移転が伴います。
不動産の所有権移転登記の手続きは必要に応じて土地家屋調査士(表示)、司法書士(権利)等に依頼することが一般的で、それぞれ登記費用や印紙税が発生します。
また、不動産取引にかかわる登録免許税などの税金も発生します。
賃貸物件の場合は、後継者が新たに賃貸契約を結び直しますので、継承元が手数料を負担する必要はありません。
ただし、物件の原状回復にかかる費用が敷金等で足りない場合は、追加費用の負担が生じる可能性があります。
>原状回復費用ついてはこちらの記事をご参照ください。
④医療機器のメンテナンス費用
医療機器の引き継ぎは「売却」扱いになるため譲渡対価を受け取れますが、メンテナンスを要する場合の費用負担には注意が必要です。
医療機器のメンテナンス費の負担については明確な規定がないため、継承時の交渉次第で継承元の負担となる場合もあります。
譲渡した後に医療機器の状態が悪いことがわかり、トラブルになることも少なくないため、譲渡前にきちんと動作確認とメンテナンスを行っておくのがよいでしょう。
さらに費用負担についても、合意契約書締結の段階でクリアにしておくことで、安心して引き継ぐことができます。
■クリニックの譲渡や継承に関するご相談を承っております
いかがでしたでしょうか。
ご引退をお考えになられる際、後継者となる子や親族がおられない場合でも、閉院せずに第三者へ継承するという道があります。
クリニック継承は、地域の方々にとっても「かかりつけ医を失わない」といった大きな意味を持ちます。
また、契約内容によってはスタッフの雇用を継続することも可能となります。
弊社では、閉院や継承に関するご相談を承っております。
譲渡対価診断や閉院費用などのシミュレーションができるサービスもございますので、是非ご活用ください。