クリニック継承のTo Do≪患者編≫

 

昨今、クリニック院長の高齢化や後継者不在などにより、年間2,000件以上ものクリニックが閉院していると伝えられております。
それとともに、クリニックを第三者に引き継ぐことができる「第三者継承」の認知度が高まりつつあります。

今回は、これまでクリニックに長年通院されてきた“患者様”に焦点を当て、クリニック継承が決まった後、一体どのような対応を行う必要があるのかについて詳しく解説してまいります。

◆クリニック継承で患者様はどうなる?

長年、多くの患者様を診てきた先生にとっては、患者様の今後については最も重要な気掛かり事でしょう。
クリニックの第三者継承では、継承元の院長先生にとっては大切な患者様を後継者の先生に引き継ぐことができ、後継者の先生には新規開業とは異なり、一から集患を行う必要がないことから開業初月から黒字が見込めるという大きなメリットがあります。

継承後、院長の交代によって2割程度の患者様が背離してしまうと言われていますが、その理由は「前院長だったからこそ通っていた。」という方が一定数いらっしゃることが一因と考えられます。
この2割程度の患者様が背離するというデータは、あくまでも後継者の先生にしっかりと引き継ぎを行った場合の数字です。
万が一、引き継ぎをしっかりと行わなかった場合は、さらに多くの患者様が継承後に背離してしまうことが想定されます。

このようなことからも、クリニックの第三者継承において、いかに後継者の先生への引き継ぎが重要かということが伺えます。
逆に、しっかりとした引き継ぎの下で前院長の医療サービスを踏襲し、さらにプラスアルファの専門性が発揮されれば、背離した患者様が戻ってくるだけでなく、新患の獲得が期待できることも、また事実なのです。

◆実際の引き継ぎの方法

次に、望ましい引き継ぎとはどのようなものなのか具体的に見てまいりましょう。

譲渡契約が成立後、継承元の院長と後継者の先生が一緒に診察する「引き継ぎ期間」を設け「新しい先生に代わっても、かかりつけ医として安心して任せられる」というポジティブなイメージを患者様に植え付け、安心してもらうことが大切です。

継承元の院長先生は、患者様とご家族の生活背景など、カルテに記載されていない患者様一人ひとりの多種多様な情報が頭の中に蓄積されていることでしょう。
単なるカルテの情報だけではなく、これらの情報を後継者の先生に共有し、長年築き上げてきた患者様との信頼関係や診療方針を後継者の先生に継承することが、本当の意味での引き継ぐべきかかりつけ医の姿なのではないでしょうか。

◆患者様のカルテの引き継ぎ

また、クリニックで保管する患者様のカルテには、患者様の氏名、年齢、住所などの個人情報に加え、病歴や薬歴といった情報も含まれまていますので、当然ながら個人情報に該当し、個人情報保護法の適用を受けることとなります。
しかし、継承元の院長が高齢になり、体力の衰えや持病などを抱えておられる中で、患者様一人ひとりに対して、カルテ引継ぎの事前承諾を得ることは現実的とは言えません。
では、クリニック継承時に後継者の医師にカルテを引き継ぐことは、個人情報保護法に抵触するのでしょうか?

継承におけるカルテの引き継ぎについては、個人情報保護法における適用除外項目(「合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合」は第三者に該当しない)が該当します。※1
そのため、法律上は、後継医師へのカルテ情報の引継ぎは、個人情報保護法に抵触しないと考えられます。
ただし、個人情報保護法に定められている、「個人情報取扱事業者は、合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り扱ってはならない。※2」
とある通り、診療等の医療行為の目的を超えて個人情報を活用することは、個人情報保護法に抵触することになります。

通常のクリニック継承の進め方においては問題ないと考えられますが、個人情報保護委員会が定めている、「個人情報取り扱いに関する特定分野ガイドライン※3」なども参照して、適切な個人情報の取り扱いに留意することが望ましいでしょう。

※1 個人情報保護法 第23条5項2号
※2 個人情報保護法 第16条2項
※3 医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス

また、法律上の問題はないとは言え、患者様の大切な個人情報であることには変わりありません。

実務的にはクリニック継承が決定した段階で、患者様の診察のタイミングなどで、後継の先生の紹介と合わせて、カルテの引き継ぎを行う旨を伝えておくと、患者様にも安心してもらえるのではないでしょうか。
あわせて、院内の掲示物や案内などでお知らせする方法も有効な手段です。

◆引退についてお考えの先生は、お気軽にご相談ください

いかがでしたでしょうか。
長年通っておられる大事な患者様を引き継ぐことができる第三者継承ですが、円滑な継承を実現するためには「院長自らが事前に後継者の先生を患者様に紹介する」「後継者の先生には患者様のカルテ情報だけではなく生活背景など細やかな情報も共有しておく」など、患者様が今後も安心して通院できる環境を整えておくことが大切です。

弊社では、
「身内に跡継ぎがおらず、患者様のことを考えると辞めるにやめられない…」
「体力的に年々厳しくなっており、患者様を満足に診察できなくなってきている…」
などのお悩みをお持ちの先生から多くのご相談を頂いております。

「第三者継承は難しいのではないか…」とお考えの場合でも、ますは一度、弊社にご相談いただければ幸いです。