事前に知っておきたい「遺言」と「信託」の違い

 

 

昨今、少子高齢化が進み「後継者問題」は社会問題にまで発展しています。
特に「家業」としてビジネスを営んできた中小企業などは、後継者不在のために廃業を余儀なくされるケースが多く、医療業界も例外ではありません。
そういった背景もあり、最近ではクリニックを第三者に引き継ぐことができる「第三者継承」の認知度が高まりつつあります。

今回は、親子間継承などの際によく話題になる「遺言」と「信託」それぞれの違いについて詳しく解説してまいります。

遺言と信託にはどんな違いがあるのか

さっそく「遺言」と「信託」この二つの違いについて簡単にみていきましょう。

まず、「遺言」は、株式の取得者を指名することはできますが、株式の議決権を実行する者と配当を受け取る者を分離することはできません。
遺言はあくまでも被相続人の希望であり、法的な強制力はなく、確実に遺言通りに実行されるとは限りません。
遺言書の形式によっては無効とされてしまうケースもあり、度々遺言書に関する裁判などを耳にします。

一方で「信託」は、信託の設定行為が適正に行われていれば、財産は委託者固有の財産ではなく、信託財産という扱いになるため、確実に信託契約の内容に沿って管理・運用されることになります。

個人立のクリニックでの「信託」

まず、個人立のクリニックでよくある信託の事例について見ていきましょう。
個人立のクリニックの信託のケースでよくあるのは、土地・建物の信託です。
例えば、ご高齢により院長の判断能力が衰えた場合は、税金対策や遺産分割対策などができなくなる恐れがあり、やむを得ず土地の管理を信頼できる親族や第三者に委ねる(=信託)ことになります。

信託を使うことで、ご自身が生きているうちに、ご自身の財産の管理・継承・処分について定めておくことができます。
そのためには、判断能力が衰えてしまう前に「信託契約書」を残しておく必要があります。
信託契約書を定めておくことで、たとえ院長が判断能力を失ってしまったとしても、土地の管理を委ねられた受託者は契約上の責任を負うことになり、信託契約書に記された意思に基づいて土地の管理を行います。

さらに、ご自身の死亡後も代々土地を受け継いでほしいと考えるのであれば、財産をあらかじめ決めた相手に、複数世代にわたって継承することができる「受益者連続型信託」という方法もあります。

遺言でも、子に均等に財産を相続させることは可能ですが、だれが不動産を管理・運用するのかを指定することはできません。
万が一、二次相続が発生した場合は、不動産の共有所有者がどんどん増えてしまう為、売却や建替えが困難になってしまうケースも考えられます。

共有所有者間の争いを避けるためにも、土地・建物の相続に関しては、遺言という形ではなく信託を行うのが良いのではないでしょうか。

医療法人のクリニックでの「信託」

次に、医療法人のクリニックでの「信託」のケースです。
医療法人のクリニックでは、信託の対象は経過措置型医療法人の出資持分があたると考えられます。
経過措置型医療法人の出資持分には「出資持分払戻請求権」と「残余財産分配請求権」という二つの財産権がありますが、これらには議決権がありません。
ですので、信託できたとしても医療法人の支配権には一切関係がないのです。
よって、出資持分を信託した場合でも、医療法人の支配権を維持することはできませんが、「出資持分払戻請求権」と「残余財産分配請求権」を管理することは可能と考えられます。

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いかがでしたでしょうか。
遺言や信託については、言葉ではよく耳にしますが、いざご自身で準備を始めようと思っても、一体何をどのように始めればいいものか悩まれることでしょう。
遺言や相続については、専門的な知識が必要となるため、まずは税理士などに相談し、どのように進めるかを決めることが望ましいと言えます。

弊社では、グループ内に税理士法人や社労士法人を有するクリニック経営に特化したコンサルティングファームとも協力し、クリニックの運営や継承(親子間・第三者継承等)、閉院などのサポートを行っております。

「自身の体調や体力面に不安があり、引退について考えるようになった」
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