開業医の必要経費って??(前編)

昨今クリニックの承継開業の認知度が高まるにつれ、弊社がご支援する中でも、“新規開業と承継開業のどちらも並行して検討している”という先生が増えております。それとともに「クリニックの経営について学びたい」、「開業に関して学びたい」という先生からのお声を多くいただくようになり、それらの声にお応えすべく、弊社では開業や経営に関する情報発信を積極的に行っております。今回は『開業医の必要経費って??(前編)』と題しまして、開業前にかかる準備費用は必要経費として認められるのか?について解説してまいります。

◆そもそも「必要経費」って?

「必要経費」とは、所得を得るために必要な経費のことを指します。例えば飲食店の場合ですと、食材費・水道光熱費などが必要経費となります。事業を行うときには、必要経費を収入から差し引き、残った金額が所得となります。つまり何が必要経費として計上できるかを把握することで、正しく事業の所得を計算できるようになるのです。

◆クリニック開業前の必要経費

新規開業・承継開業を問わず、クリニック開業に向けての準備期間には様々な出費が嵩むことでしょう。開業費は繰延資産という資産に該当し、この繰延資産を費用化するための会計処理方法には60ヶ月の均等償却と任意償却(毎年の償却金額や償却期間を自由に決められる方法)があります。個人立のクリニックの場合は、期間の定めなく、開業しようと思った日から開業日までに支出した費用が開業費となります。上記の任意償却という考えに基づき、開業費は全額、開業した年の費用として確定申告できるのです。法人の場合は、法務局に設立登記をした日が開業日として法的に明らかになることから、この開業日から事業を開始するまでに支出した費用が開業費となります。設立日よりも前に支出した費用は、法人を設立するために生じた費用として「創立費」として開業費と同様に繰延資産として計上し、任意償却もしくは均等償却により経費となります。開業費とは、開業準備のために特別に支出した費用であり、開業についての打ち合わせに関する費用やスタッフの人件費、セミナー参加費、書籍購入費、備品(10万円未満)、家賃、水道光熱費など、実に様々な費用が対象となります。しかし医療法人の場合は、個人事業の場合よりも開業費として認められる範囲が狭く、経常的な費用(人件費、家賃、水道光熱費等)は含まれません。また、パソコンなど1つ10万円を超えるクリニック備品については「固定資産」となり、開業費には含まれず、原則として減価償却しなければなりませんので注意が必要です。

≪クリニック開業前の必要経費(一部抜粋)≫

◆情報収集等に伴う費用・セミナー参加費・交通費・書籍購入 など◆打合せに伴う費用・各関係者、会社との打合せ費用(飲食費等)・交通費 など※打合せした相手・目的・日時・場所を明確に記録しておく◆募集広告料(新聞やネット掲載等)・掲載費用・人材紹介会社への手数料・面接時の経費 など◆人件費・面接費(会場代、交通費等)・従業員への研修費用・開業前の人件費 など◆固定費・開業日前にかかる家賃・水道・光熱費・通信費 など◆宣伝費・開院チラシ・ハガキ製作費・開院祝賀会・内覧会の費用 など◆クリニック備品代 ※1つ10万円未満・文具・プリンター・待合室の本 など◆印刷代・診察券・名刺 など

◆クリニック開業についてのご相談を承っております

いかがでしたでしょうか。本記事では、クリニック開業前にかかる費用について、どのような出費が経費として計上できるのかについてみてまいりました。開業費は、あくまでも「開業の為に必要な支出」であることが前提ですので、後になってからでも開業費であることを説明できるよう、領収書を保存する際には、「目的・用途」などをメモしておくことをオススメ致します。後編では、開業後の必要経費について解説いたします。開業に関するご相談や承継案件の紹介依頼など、クリニック開業にご関心がございましたら、是非お気軽にお問合せください。