クリニックの親族内継承って?(個人経営編)

「クリニックを継承するにあたり、親族内で引き継ぐのであれば、第三者継承に比べてスムーズにできるだろう」とお考えの先生も少なくないのではないでしょうか。
実際のところ、親族内継承・第三者継承を問わず、基本的な継承の流れに大きな違いはありません。
むしろ親族内継承だからこそ必要となる手続きや注意点もございます。

今回は、『クリニックの親族内継承って?(個人経営編)』と題しまして、個人立のクリニックを親族内継承する場合に必要な手続きや注意しておきたいポイントについて詳しく解説致します。

◆親族内継承をスムーズに行うために重要なこと

まず、親族内継承を円滑に進めるためには、どのようなスキームを構築するかが重要となります。
個人立のクリニックの場合は、継承前に医療法人化を進めるケースや個人立のまま継承するケースなど様々です。
今回は、個人立のまま親族内で継承するケースについて見ていきましょう。

個人立のクリニックを継承する方法は、生前継承・相続時継承・廃業の3つの方法があります。
クリニックの継承をコンサルタントに依頼する場合、あくまでも継承することが前提とはなりますが、クリニックのご状況やご事情によっては、無理に継承を進めず、廃業という選択肢をご提案することも珍しくありません。
そういった意味で、本記事では「廃業」も継承の選択肢の一つとしてあげております。

①生前継承で譲渡する場合
生前継承を行う際には、クリニックの資産を後継者に譲渡又は贈与することになります。
まず、生前継承で資産を譲渡する場合について見ていきます。
譲渡する場合、前提として譲渡益に対する課税対象者は譲渡側である「親」となります。
また、クリニックの不動産と医療機器等の動産では税金の計算方法も異なります。
不動産については分離譲渡という方法になり、不動産譲渡の所得に対して税率をかけて計算します。
次に、医療機器等の動産については、所得を求めた後、その他の給与などの1年間の所得と合算し、その合計に対して税額の計算を行います。

②生前継承で贈与する場合
①の場合は、資産などを渡す対価として、後継者から現金等を受け取ることになりますが、それができない場合は贈与という方法があります。
この贈与益に対する課税対象者は受け取る側の「子」となります。
クリニックの贈与税は、特例税率により計算を行います。
>贈与税率(特例贈与財産用)についてはこちら

③相続時継承の場合
上記の①・②では先代経営者が生前に資産を後継者に移転するのに対し、相続時継承では、相続の際に資産の移転を行います。
開設管理者及びクリニックの資産が先代名義の場合、開設管理者の変更手続きと資産の所有権の移転変更が同時に行われます。

クリニックの資産や負債は、先代経営者の他の財産等と合わせて計算し、相続人(後継者)が包括的に相続することになります。

また、相続財産が基礎控除額(3,000万円+600万円×法廷相続人の数)を上回る際には、相続税の申告と納税が必要なケースもあります。

これらの相続税は、原則的に先代経営者が亡くなった日から10カ月後までに申告及び納税が必要となります。
相続時継承を行う際には、納税資金の確保も大変重要となりますので、注意が必要です。

◆クリニックの譲渡・閉院などについての個別相談を承っております

いかがでしたでしょうか。
本記事では、個人立のクリニックを親族内継承する場合の手続きや注意しておきたいポイントについて解説してまいりました。
次回は、医療法人を親族内継承する場合について解説致します。

弊社では、引退(親族間継承、第三者継承、閉院準備など)に関する無料の個別相談を承っております。

また、既に閉院を決めている場合のサポートも可能です。
引退に際しての気掛かりごとがございましたら、どんな内容でも構いませんので是非お気軽にお問い合わせください。