クリニック継承で、譲渡額交渉はどのように進められる?
クリニックを閉院することなく、後継者に患者さんやスタッフを引き継ぐことができるクリニックの第三者継承。一見メリットばかりのクリニック継承も、進め方によっては大きなトラブルを招いてしまうことも…
今回は、医院継承において避けて通ることのできない「譲渡額交渉」について、どのように進められるのか見ていきましょう。
◆交渉が決裂してしまうその要因とは
クリニック継承において交渉が上手く進まない原因はどのようなものでしょうか?
継承においては、大きく①先生個人間交渉、②FA(フィナンシャルアドバイザー)※、③仲介の3パターンが考えられます。
※売り手、買い手双方に異なるアドバイザーがつく方式
特に先生間で直接継承についての条件交渉や調整を進める場合、利益相反関係にある当事者での交渉ごとになるため、それぞれの主観をもとに話が進みやすく、一旦話がこじれると破談になってしまうリスクが高い形だと言えます。
②のFA方式においては、クライアントの利益最大化を目指してそれぞれが動くことになるため、ハードな交渉になりやすい形だと言えます。
どちらかの利益を最大化しやすい一方で交渉が決裂しやすいというリスクも相応にあります。
③仲介の場合は、両者の間に立って交渉をまとめていくため、フィナンシャルアドバイザーと比べると、比較的スムーズに交渉が進むことが多い印象です。
ただし、利用者に対する役務提供を主眼とするため、クライアントの利益不利益よりも、公平にメリットを享受できる接点を見出し、医療の持続性を重んじるという特徴があります。
いずれの形にしても、交渉事は売り手の先生と買い手の先生の間での目線の違いや方針の違いがあること、そして何より基本的に当事者が利益相反関係にあるという点にあります。
売り手の先生としてはできるだけ高い金額で売却をしたいですし、買い手の先生としては、できるだけ低い金額で買収を成功させたいと考えるのは当然のことです。
その両者の思惑がこのような乖離を生んでしまう要因といえるでしょう。
◆利益相反関係にある両者の溝を埋めていくポイントとは
それでは利益相反関係にある両者の溝はどのように埋めていくのが良いのでしょうか?
ここで重要となってくるのは「客観性」と「納得性」です。
金額交渉のベースとなるのは、売り手側から提示する「譲渡金額」ですが、この金額が根拠に基づかないもの、売り手側の主観が大きく反映されたものだったりすると、そもそも適正な額ではないというところから始まってしまうので、話がまとまりづらくなってしまいますし、逆に買い手側から減額の要望を出す場合でも「高すぎるから少しまけてほしい」だけでは、一向に話が進まないことは容易に想像ができると思います。
◆譲渡額における客観性・納得性とは
譲渡金額のうち営業権の算出方法については、法律などで定められているものではないので、仲介業者やアドバイザーによって様々ですが、弊社の場合は、クリニックの直近の実質利益をベースに算出を行っています。
クリニック継承において営業権の本質は「患者を引き継ぐ対価」と考えれば、利益額をベースに譲渡額を算出することは客観性・納得性があるものではないでしょうか?
また、買い手側が減額交渉を申し入れる場合も、例えば「○○科で来院いただいている患者さんは、自身の領域外で引き継ぎが難しいので、その分の利益額は譲渡額から減額してほしい」など、減額してほしい根拠を、合わせて述べる方が納得性があり、スムーズな交渉につながるのではないでしょうか?
◆ご勇退・継承のご準備はクリニック継承の専門家へのご相談を
いかがでしたでしょうか。
今回ご紹介したケースはあくまで一例となり、実際の場面ではさまざまなケースが考えられますが、クリニック専門の継承コンサルタントとして、双方が納得できるよう条件交渉・調整の場面でもしっかりとサポート致します。
すでに継承や閉院を検討されている先生はもちろん、引退についてまだ具体的な考えをお持ちでない方も、転ばぬ先の杖として、ぜひ個別相談や引退準備セミナーをご活用ください。